パレスチナ自治区ガザ地区における人道危機が深刻化する中、日本を含む西側25カ国の外相が21日、イスラエルを非難する共同声明を発表しました。この声明は、ガザ地区への食料援助を巡る現状の危険性と、支援物資を求める住民に多数の死傷者が出ている事態に対し、国際社会が強い懸念を表明したものです。パレスチナ保健省によると、今年5月下旬以降、人道支援物資を受け取ろうとして命を落とした住民は1000人を超え、状況は極めて緊迫しています。
支援物資配給現場での犠牲者急増とイスラエル軍の関与
国連の報告によれば、ガザ地区で発生した死傷者の大半は、イスラエルと米国が後ろ盾となっている「ガザ人道財団(GHF)」が運営する援助物資の配給所へ向かう途中で被害に遭っています。GHFは5月27日から活動を開始しましたが、パレスチナ当局および複数の目撃者の証言は、これら死傷事件の大部分にイスラエル軍が関与していると指摘しています。イスラエル軍は、一部の事案については群衆への警告射撃であったことを認めており、6月下旬には「住民との摩擦」を最小限に抑えるため、援助拠点へのルートを「再編」したと発表していました。しかし、その後も住民の殺害は止まず、人道状況は悪化の一途をたどっています。
ガザ人道財団(GHF)から配給された人道支援物資を運ぶガザ地区の住民
西側25カ国外相による異例の共同声明
21日に発表された西側諸国の外相声明は、ガザ市民の苦しみが「かつてないほど深刻化している」と強調しました。声明では、イスラエル政府の援助物資配給モデルが「危険であり、不安定化をあおってガザ住民の人間としての尊厳を奪っている」と厳しく指摘。さらに、「絞り出すような食料援助と市民の非人道的な殺害を非難する」とし、水や食料といった最も基本的なニーズを満たそうとする子どもたちや人々が殺されている現状への強い憤りを表明しました。この声明には、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国の外相、そして欧州連合(EU)の平等・準備・危機管理委員が署名しており、国際社会の幅広い懸念を示しています。
深刻化するガザの飢餓と国際社会の懸念
ガザの保健当局の最新データによると、過去24時間だけで援助物資の入手を試みて99人が死亡し、少なくとも650人が負傷しました。5月下旬からの累計では、援助物資を求めて命を落とした人が1021人に上り、負傷者は6511人に達しています。今回の紛争が始まって以来のガザ地区での総犠牲者数は、既に5万9029人に及んでいます。イスラエルは今年3月2日から5月21日までの11週間にわたり、ガザ地区への援助物資の搬入を事実上阻止していました。国連機関は、ガザ地区における飢餓と栄養不良が深刻化の一途をたどっていることに強い危機感を募らせています。支援団体によるガザ地区への立ち入りは依然として厳しく制限されており、イスラエル側はイスラム組織ハマスによる物資の盗難を防ぐためだと主張しています。しかし、今回の外相声明は、これほど多くのパレスチナ人が援助を求めて殺害されている実態を「恐ろしい」と表現し、「民間人への必要不可欠な人道支援をイスラエル政府が拒んでいることは容認できない。イスラエルは国際法に定められた義務を果たさなければならない」と強く訴え、イスラエル政府に対し、ガザに対する援助制限の即時解除と、国連などの人道支援団体が「安全かつ効率的に」活動できる環境の整備を要求しています。
イスラエルの反論とハマスの責任論
これらの国際的な非難に対し、イスラエルは異なる見解を示しています。イスラエル政府は、外相声明が「ハマスに対する圧力に焦点を当てておらず、現状に対するハマスの関与と責任を認識していない」と反論する声明を発表しました。イスラエル側は、戦争の継続と双方の苦しみに対する責任は「ハマスのみにある」と主張し、国際社会の関心が誤った方向へ向けられていると訴えています。
ガザ地区の人道状況は依然として極めて厳しく、国際社会はイスラエルに対し、人道支援の確保と民間人の保護に関する国際法上の義務を果たすよう強く求めています。日本を含む多くの国々がこの問題に声を上げていることは、ガザの状況がいかに緊急かつ深刻であるかを物語っています。