地球の自転加速で「1日」が短縮:科学と時間管理への影響とは?

この夏、地球の自転速度がわずかに速くなり、1日の時間がごくわずかではあるものの短くなっていることが、科学者や時間の管理に携わる専門家たちの間で大きな注目を集めています。特に7月10日には今年最も短い1日を記録し、その日は通常の24時間よりも1.36ミリ秒短かったと報じられました(国際地球回転・基準系事業(IERS)と米海軍天文台のデータに基づく)。さらに8月5日にも1.25ミリ秒短い日が予測されるなど、この現象は現代の時間測定システムに新たな課題を提起しています。

地球の自転速度が速まり、1日が短くなった様子を示すイメージ。原子時計と地球の自転のずれを象徴している。地球の自転速度が速まり、1日が短くなった様子を示すイメージ。原子時計と地球の自転のずれを象徴している。

地球の自転速度、複雑な変動要因

「1日」の長さは、地球が自転軸を中心に1回転するのにかかる時間として定義されており、平均的には24時間、すなわち8万6400秒とされています。しかし、実際には地球の自転周期は完全に一定ではありません。月の引力、大気の季節的な変化、さらには地球内部の液体核の動きなど、多様な要因によってごくわずかに不規則な変動が生じます。このため、実際の1回転にかかる時間は8万6400秒よりわずかに短かったり長かったりしますが、その差は通常わずか数ミリ秒であり、日常生活において体感できるほどの影響を及ぼすものではありません。

しかし、このようなわずかなずれでも、長期的にはコンピューターシステム、衛星の運用、そして国際的な通信網に重大な影響を及ぼす可能性があります。専門家の中には、これがかつて「2000年問題」として懸念された事態と同様のシナリオ、すなわち現代文明のインフラに混乱をもたらす可能性を指摘する声も上がっています。

原子時計と「うるう秒」による時間調整の歴史

時間のずれを正確に追跡し管理するために、1955年に導入されたのが原子時計です。原子時計は、内部の真空容器に閉じ込められた原子の振動数を数えることで、極めて高い精度で24時間を計測します。この原子時計によって定められた時間は「協定世界時(UTC)」と呼ばれ、世界標準時として私たちの携帯電話やコンピューターの時刻設定の基準となっています。

一方で、天文学者は地球の位置を確認する衛星などを利用して、地球の実際の自転と原子時計が示す時刻との間に生じるごくわずかな差を継続的に追跡しています。事実、2024年7月5日には、地球が原子時計の登場以降で最も短い1日を経験しており、その日は24時間より1.66ミリ秒短かったと記録されています。スクリップス海洋研究所の地球物理学名誉教授であるダンカン・アグニュー氏は、「1972年以降、1日がやや早くなる傾向にある」と指摘しつつも、「変動はあり、まるで株式市場を見ているようだ。長期的な傾向があり、その後、最高値がつき、下落する」と、その複雑な動きを例えています。

1972年当時、地球の自転は数十年間にわたって比較的ゆっくりと回転していたため、原子時計の時間に比べて遅れが生じていました。このずれを補正するため、IERSはUTCに「うるう秒」を追加することを義務付けました。うるう秒は、グレゴリオ暦と地球が太陽の周りを1周するのにかかる時間のずれを補うために、4年ごとに2月に1日追加される「うるう年」と似た目的で導入されました。1972年以降、UTCには合計27回のうるう秒が追加されてきましたが、近年、地球の自転速度が高まったことで、うるう秒が挿入される頻度は徐々に減少しています。特に2016年以降は、うるう秒は一度も追加されていません。

「うるう秒」の将来と「マイナスのうるう秒」の可能性

このような状況を受け、2022年には国際度量衡総会(CGPM)が2035年までにうるう秒を廃止することを決議しました。これは、今後時計にうるう秒が追加されることがなくなる可能性を示唆しています。しかし、アグニュー氏の分析によれば、もし地球の自転速度が今後も速くなり続ける場合、最終的にはUTCから1秒を削除する必要が生じるかもしれません。これは「マイナスのうるう秒」と呼ばれ、これまでに発生したことはありませんが、アグニュー氏は「今から35年までの間に発生する確率は約40%だ」との見方を示しており、未来の時間管理において新たな議論を呼ぶ可能性を秘めています。

結論

地球の自転速度のわずかな変動は、私たちの日常生活に直接的な影響を与えることは少ないものの、高度に精密化された現代社会の技術インフラにおいては、時間管理のあり方を根本から見直す必要性を提起しています。原子時計による正確な時間測定と地球の自転の間に生じるずれをいかに調整していくか、そして「うるう秒」の廃止や将来的な「マイナスのうるう秒」の可能性は、科学者だけでなく、世界中の技術者や政策立案者にとっても重要な課題となるでしょう。

参考資料

  • CNN
  • timeanddate.com
  • 国際地球回転・基準系事業(IERS)
  • 米海軍天文台
  • スクリップス海洋研究所
  • 国際度量衡総会(CGPM)