近年、日本の中学入試、特に「英語入試」の様相が急速に変化しています。最難関校である豊島岡女子学園が英語資格利用入試を導入したのを皮切りに、各校で英語の扱い方が多様化し、その動きは2026年入試においても加速しています。本記事では、進化する「英語入試」の現状と背景、そして今後の展望について深く掘り下げていきます。
難関校が牽引する「英語資格利用入試」の新展開
2025年入試において、豊島岡女子学園が英語資格(英検など)を活用し、算数1科で受験できる方式を導入したことは、中学受験界に大きな衝撃を与えました。募集人数は若干名であったにもかかわらず、約300人もの受験生が出願した事実が、この新たな入試方式への高い関心と需要を如実に示しています。この動きは、難関・上位校の入試戦略に大きな影響を及ぼすことは避けられないでしょう。
豊島岡の取り組みに続き、2026年入試では、頌栄女子学院(東京・港区)が一般生向けに英語利用入試を新設することを発表しました。2月1日と5日の2つの入試回で、国語・算数(各100点満点)に加え、英検の取得級に応じたみなし得点(3級70点、準2級90点、準2級プラス100点、2級110点、準1級130点、1級150点)が加算されます。特に換算点が100点を超える設定は珍しく、英語力の評価に積極的な姿勢がうかがえます。これらの入試では面接は実施されません。また、頌栄女子学院の帰国生向け2月入試は廃止され、12月6日のみの実施となり、こちらは保護者同伴の面接が課されます。このように、難関校による英語入試の多様化は、受験生にとって新たな選択肢を提供すると同時に、受験戦略を練る上での重要な要素となっています。
頌栄女子学院の校舎。2026年中学入試で英語資格利用入試を導入し、中学受験の英語入試に新たな動きを見せる。
多様化する一般生向け「英語入試」の現状と背景
首都圏1都3県に茨城県の2校(江戸川学園取手、茗溪学園)を加えると、2025年には私立中学校124校が何らかの形で英語入試を実施しました。学校種別で見ると、男子校3校、女子校40校、共学校81校となっており、共学校での導入が特に目立っています。
一般生向けの英語入試は、その内容によって大きく4つのタイプに分類されます。最も一般的なのは、国語・算数などの教科型科目の一つとして英語を扱う「教科型」です。例えば、江戸川学園取手では5教科または国語・算数・英語の3教科を課す入試が行われていますが、2026年からは必修化されていた英語リスニングが廃止される予定です。このように、中堅・中位校を中心に、多様な入試の「品ぞろえ」の一環として英語が導入されるケースが多く見られます。
これらの「英語入試」が普及してきた背景には、2020年度から小学校で英語教育が必修化されたことがあります。小学校3・4年生で「外国語活動」が必修となり、5・6年生では「外国語科」として年間70時間(週2コマ相当)が教科化されました。これにより、中学校受験時にすでに英語学習の経験を持つ児童が増え、各中学校が英語を入試に取り入れる動きが加速したと言えるでしょう。
しかし、小学校段階からの英語学習の強化は、保護者や教育現場から懸念の声も上がっています。中学卒業レベルとされる英検3級から、中学初級レベルの5級までの比較的易しい問題が主となるものの、受験準備のために英語の先取り学習が過熱し、結果として「英語嫌い」になってしまう子どもも少なくないという指摘です。入試における英語の扱いは、子どもたちの学習意欲や将来の英語学習への影響という点で、保護者にとって依然として悩ましい課題となっています。
結論と展望
日本の中学入試における「英語入試」は、豊島岡女子学園や頌栄女子学院といった難関校の新たな動きに牽引され、その多様性と重要性を増しています。小学校での英語教科化を背景に普及が進む一方で、受験における英語学習のあり方については、教育的な配慮も求められる状況です。2026年以降も、各学校の入試改革は続き、英語の役割はさらに変化していくことでしょう。受験を検討する保護者や生徒は、常に最新の情報を入手し、それぞれの学校が求める英語力と、それがもたらす教育効果を総合的に判断していくことが重要となります。
参考資料: