米国のスターバックスで、店舗が提供するコーヒーの量だけでなく、経営トップへの報酬も大きく増加している。米労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)が23日に発表した年次報告書によると、スターバックスのブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)は昨年、同社の平均的な従業員に支払われる給与の6666倍もの報酬を受け取った。この給与格差は、報告書に掲載された米国内の上場企業500社の中で最大を記録した。
ニコルCEOは昨年9月にスターバックスの経営トップに就任。証券取引委員会(SEC)への企業提出書類に基づき算出された彼の報酬は、約9800万ドル(約143億円)に迫る額だった。これに対し、同社の典型的な従業員の年間給与は1万5000ドルを下回っていた。
米国企業における給与格差の実態と拡大傾向
スターバックスの事例は、米国の大手企業経営者と従業員の間で広がる大きな給与格差の典型例に過ぎない。この格差は2024年に一段と拡大していることが明らかになった。
AFL-CIOの報告によれば、米国の最大手公開企業のCEOが昨年受け取った報酬は平均1890万ドルに達し、これは平均的な米国人労働者の給与の285倍に相当する。この比率は前年の268対1からさらに上昇した。S&P500企業のCEO報酬は昨年、前年比で7%増加した一方、労働統計局(BLS)のデータが示すように、民間部門の従業員の給与上昇率は3%にとどまっている。このデータは、経営トップと一般従業員との間の経済的格差が着実に広がっている現状を浮き彫りにしている。
スターバックス側の見解と労働組合の動き
スターバックスはSECへの提出書類の中で、同社の典型的な従業員は米国内で働くパートタイムのバリスタであると説明している。多くの従業員がパートタイムや柔軟な勤務形態で働いているため、従業員の給与水準の中央値が低くなる結果になっていると指摘。また、この計算には世界各地で勤務する約36万1000人の従業員が含まれており、約21万人の米国拠点の従業員のみを対象としているわけではないと補足している。
スターバックスのブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)の肖像画、高額報酬に関する報告の文脈で。
一方で、同社の従業員の一部は「スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッド」という労働組合を結成し、近年、複数の店舗で賃上げを要求するストライキを実施している。賃金の引き上げは、彼らが最も強く求めている要求の一つであり、今回の報酬格差の報告は、従業員の不満に拍車をかける可能性がある。
給与格差が示す社会的な課題
スターバックスの事例は、米国における企業トップと一般労働者の間の給与格差が深刻化していることを示唆している。このような格差の拡大は、社会的な公平性や経済的な安定性に対する懸念を呼び起こす可能性がある。企業の成長が株主や経営陣にのみ還元される傾向が強まる中で、従業員の労働条件や賃金改善への継続的な議論が求められている。