マンション資産価値の真実:後悔しない購入のための価格形成ロジックと有望エリア分析

マンション購入を検討する際、その「資産価値」が将来どのように変動するかは、購入者の最大の関心事の一つです。価格を左右する要因や、資産価値の上昇が期待できる有望なエリアはどこなのでしょうか。本記事では、マンションの価格がどのように形成されるのか、そして賢明な購入のための重要なポイントを専門家の視点から詳しく解説します。

マンション価格形成の基本ロジック

マンションの価格は、新築と中古でその形成ロジックが異なります。

新築マンションの価格は、基本的に土地代、建築費、広告費などの「原価」にデベロッパーの「利益」を加えて算出されます。一方、中古マンションの価格は、新築マンションを含む「周辺取引事例」に基づいて値付けされるのが一般的です。

近年、エネルギー価格の高騰などが影響し、建築コストは2015年から2023年までの間に約30%も上昇しています。この傾向から、新築マンションの価格が今後下がることは考えにくい状況です。さらに、新築マンションの供給戸数が減少しているため、それに伴って中古マンションへの需要が増大し、価格も上昇しています。この価格上昇の流れは、不可逆的なものと捉えられます。

実際に、あるエリアで中古マンションの周辺相場が坪400万円程度だったところに、坪単価700万円の新築マンションの供給が決定すると、中古マンションの相場も坪600万円程度まで上昇するといった現象が観測されています。これは、新築マンションの価格が、周辺の中古マンションの相場を引き上げる強力な要因となることを示しています。

資産価値を左右する最重要要因「立地」

マンション購入において最も重要視されるのが「立地」です。まさに「一に立地、二に立地、三に立地」と言われるほど、その価値は絶大です。ベースとなる相場を形成するのは、エリアごとの「需要」に他なりません。

都内で言えば、港区の人気の高さは群を抜いています。港区には、「3A」と呼ばれる青山、赤坂、麻布といった高級エリアが広がり、商業施設も充実しているため、非常に高い需要があります。

地域の将来的な資産価値を見る上で、特に重要なポイントは「人口」と「平均年収」が上昇傾向にあるかどうかです。この点においても、港区は申し分のない条件を備えています。港区の人口は2022年時点で約26万人でしたが、2040年には34万人を超えるとの予測があります。また、住民の推定平均年収は2021年で1185万円と、全国的に見てもトップクラスです。

例えば、夫婦の世帯年収が2370万円(1185万円×2)だった場合、その7倍のペアローンを組むと1億6590万円の物件が購入可能になります。この金額で55平米(約17坪)の物件を購入したとすると、坪単価は約975万円となります。このように計算される坪単価は、その地域のマンション相場の目安として考えることができます。もちろん、実際の相場は周辺の取引事例などによってさらに変動します。

マンションの資産価値と将来性を象徴する外観写真。マンションの資産価値と将来性を象徴する外観写真。

地域としての「話題性」と「タワーマンション」の役割

“資産価値の上昇が期待されるマンション”を見つける上で、以下の2つのポイントも分かりやすい指標となります。

  1. エリアとしてニュース性があるか
  2. 非タワーマンションよりもタワーマンション

港区にタワーマンションを購入できればそれに越したことはありませんが、そのためには世帯年収2800万円以上が望まれるなど、購入できる層はごくわずかです。他の地域で探すのであれば、まずそのエリアの「ニュース性」に注目してみましょう。つまり「地域としての話題性があるか?」という点です。

メディアに取り上げられる機会が多い地域は、その注目度が高まり、人々に認知されやすくなります。これまで様々なメディアが発表する「住みたい街ランキング」では、情報番組などで頻繁に取り上げられていた吉祥寺(武蔵野市)や恵比寿(渋谷区)が常に上位を占めていました。現在でも吉祥寺や恵比寿は人気ですが、近年では横浜(神奈川県)や大宮(埼玉県)が上位に食い込むようになってきています。これも、メディアで取り上げられる機会が増えていることと無関係ではありません。

具体的には、「新築マンションを建てる計画がある」や「再開発計画が進行している」といった要素もニュース性に含まれます。こうした大規模な計画が決定していれば、地域の話題性はおのずと高まり、将来の資産価値上昇に寄与する可能性が高まります。

「非タワーよりもタワー」という傾向も、上記のニュース性や話題性と密接に関係しています。タワーマンションはその存在自体が地域のランドマークとなり、メディアで取り上げられやすく、常に注目を集める傾向にあります。

結論

マンションの資産価値は、主に価格形成の基本ロジック、最も重要な「立地」、そしてその地域の「話題性」や「タワーマンション」の有無によって大きく左右されます。建築費の高騰により新築価格が下がる見込みが薄い中、中古マンションの需要は今後も堅調に推移すると予測されます。

特に、人口増加と平均年収の上昇が見込まれるエリア、そしてメディアで注目され、再開発や新たなマンション計画が進行中の地域は、将来的な資産価値の上昇が期待できます。これらの要素を複合的に考慮することで、後悔のないマンション選び、そして「住む資産形成」を実現することができるでしょう。

参考文献

  • 稲垣慶州『住む資産形成 資産価値重視で後悔しないマンションの選び方』(KADOKAWA)
  • 各自治体公表データ(人口統計、平均年収等)