「生活費が苦しい」「給料が上がっても手取りが増えない」――そう感じている日本人は少なくないでしょう。その背景には、日本が直面する急速な高齢化と、それに伴う「国民負担率の増加」という厳然たる現実があります。実際、私たちの所得の半分近くが、税金や社会保障費として消えていく状況が生まれているのです。本記事では、総務省や厚生労働省などの公的データに基づき、高齢化が家計に与える影響と国民負担率の実態について、詳しく解説します。
所得の半分が税金や社会保障費として消える現実を示すイメージ
日本の「超高齢社会」:現役世代に迫る現実
まず、日本における高齢化の現状を見ていきましょう。総務省統計局が公表する「高齢者人口及び割合の推移」によると、総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合は、1950年にはわずか4.9%でしたが、2022年には29.1%にまで増加しました。これは、日本の国民のおよそ3人に1人が高齢者であることを意味します。
さらに、国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2040年にはこの割合が35.3%に達するとされています。特に、1971年から1974年生まれの「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる影響が大きく、日本は文字通り「超高齢社会」の真っただ中にあります。このような構造変化は、現役世代にどのような財政的負担をもたらすのでしょうか。
「国民負担率50.9%」:所得の半分が消えるメカニズム
高齢化が私たちの家計に直接的に響く指標が「国民負担率」です。厚生労働省の「国民負担率(租税負担、社会保障負担)の推移」のグラフを見ると、その深刻さが浮き彫りになります。1970年度には国民所得に対する負担が24.3%でしたが、2024年度の国民負担率は45.1%に達する見込みです。
この国民負担率に、国が抱える財政赤字(対国民所得比)を加えると、その割合は驚くべきことに50.9%にもなります。これは、私たちが稼いだお金の半分以上が、税金や社会保障費、そして将来へのツケとなる財政赤字として消えてしまうことを意味します。給与明細を見て「こんなに引かれるのか」と感じるのは、決して気のせいではないのです。
特に注目すべきは、「社会保障負担」の増加です。1970年度から2024年度にかけて、社会保障負担は13.0%も増加しています。財政赤字は「隠れた借金」とも言え、現在の負担に加えて、将来の世代へと積み重なるツケも増大している状況がわかります。このように、家計に直結する負担の増加が、現在の現役世代に集中しているのが日本の現実です。
まとめ
日本の「超高齢社会」は、国民の家計に直接的な影響を及ぼし、特に現役世代に重い負担を強いています。国民負担率は年々上昇し、所得の約半分が税金や社会保障費、そして財政赤字によって消費される状況が常態化しつつあります。この状況を理解することは、私たち自身の生活設計を考える上で不可欠です。
参考文献
- 総務省統計局「統計でみる日本の高齢者」(各種公表資料)
- 厚生労働省「国民負担率(租税負担、社会保障負担)の推移」(各種公表資料)
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(各種公表資料)