7月、アメリカ軍は日本各地に最新鋭の兵器を続々と展開しました。これは、地域における安全保障環境の変化に対応し、特に中国や北朝鮮の動向を強く牽制する「見せる抑止」戦略の一環とみられています。日本の安全保障に直結するこれらの動きを、具体的な兵器の配備状況とその戦略的意図から深く掘り下げます。
横須賀に初の寄港:ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」の戦略的意義
7月7日、アメリカ海軍の横須賀基地に、最新鋭のステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」が初めて寄港しました。この艦は、表面の突起物が極めて少ない設計によりレーダーに映りにくい特性を持ち、その外観からも既存の艦船とは一線を画しています。このタイミングでの日本寄港について、フジテレビの能勢伸之特別解説委員は、「見せる抑止」による中国への牽制が背景にあると指摘します。
アメリカ海軍横須賀基地に初めて寄港した最新鋭ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」
能勢氏によると、7月には中国の空母2隻が太平洋上の小笠原諸島やグアムなどを結ぶ「第2列島線」を初めて越えて展開しており、「マイケル・モンスーア」はステルス艦として、中国の海洋進出に対し”影のように寄り添い行動していた可能性”も示唆されています。同艦は、射程1600kmの巡航ミサイル「トマホーク」を最大80発連射する能力を持ち、その強力な打撃力は地域における抑止力として機能します。
将来のパワーアップ計画として、2025年12月には同型艦からの極超音速ミサイルCPS(Common Hypersonic Glide Body)の試験発射が予定されており、これにより同艦の攻撃能力はさらに飛躍的に向上するとみられています。極超音速ミサイルは、その極めて速い速度と低高度での飛行能力により、迎撃が困難であるため、未来の戦場におけるゲームチェンジャーとなり得ます。
ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」に搭載予定の極超音速ミサイルCPSとトマホークのイメージ図
嘉手納基地へのF-15EXとコブラボールの展開
海上だけでなく、空でもアメリカ軍の動きが活発化しています。7月12日には、最新鋭のF-15EX戦闘攻撃機が嘉手納基地に到着しました。この最新型のF-15は、2027年度からの配備を目指す極超音速巡航ミサイルHACM(Hypersonic Attack Cruise Missile)を搭載する予定です。HACMは射程1800km、速度はマッハ8以上とされ、海軍のCPSよりも低く速く飛ぶため、レーダーに捉えにくく、敵にとっての迎撃をさらに困難にします。このF-15EXの展開は、航空優勢の確保と迅速な打撃能力の強化を目的としています。
嘉手納基地に展開した最新鋭戦闘攻撃機F-15EXと極超音速巡航ミサイルHACMの搭載イメージ
さらに、嘉手納基地では5月から、右主翼だけが真っ黒という特徴を持つ偵察機「コブラボール(RC-135S)」が長期展開しています。コブラボールは、飛行中に他国が試験発射した弾道ミサイルや衛星打ち上げロケットの軌道を追跡し、その性能を精密に調査する能力を持っています。能勢氏は、ロシアに接近する北朝鮮が西海衛星発射場で新たな大型施設の建設を進めており、これまでより大型の偵察衛星用ロケットの打ち上げが可能になるとみられる状況を挙げ、アメリカ軍がわずか3機しか保有しないコブラボールの長期展開は極めて異例だと指摘します。これは、日本周辺の脅威、特に北朝鮮のミサイル・ロケット開発に対し、アメリカが非常に神経を尖らせていることの表れと言えるでしょう。
嘉手納基地に長期展開中の右主翼が黒い特徴的な偵察機RC-135Sコブラボール
結論:高まる地域緊張下での「見せる抑止」
これら一連の最新鋭兵器の日本への展開は、東アジア地域における安全保障環境が緊迫の度合いを増している現状を明確に示しています。アメリカは、「見せる抑止」戦略を通じて、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発といった喫緊の脅威に対し、自国の軍事力と最新技術を効果的に誇示することで、地域の安定と同盟国日本の安全保障を確保しようとしています。これらの動きは、インド太平洋地域のパワーバランスに大きな影響を与え続けることとなるでしょう。
参考文献
- FNNプライムオンライン
- Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/47f2f7b0ad11ea06e0be272fdba23349045b1fee)