半田そうめん製麺所、悪質な未払いで後払いサービス停止へ – 年間被害額100万円近く、零細企業が苦渋の決断

徳島県の特産品として知られる半田そうめんの製麺所「白滝製麺」(徳島県美馬郡)は、2025年8月から通信販売での後払いサービスを中止すると発表しました。この苦渋の決断の背景には、近年増加している「悪意のある未払い」による深刻な被害があり、同社の経営を圧迫している現状があります。今回は、その詳細と、同様の課題に直面する事業者の声をお伝えします。

悪質な未払い問題に直面し苦悩する事業者のイメージ悪質な未払い問題に直面し苦悩する事業者のイメージ

深刻化する「悪質な未払い」の実態

白滝製麺が手掛ける半田そうめんは、その太さと強いコシが特長で、全国に多くのファンを持つ人気商品です。通信販売では、贈答用から家庭用まで幅広い商品が提供されており、支払い方法として、郵便振替の後払い、クレジットカード、Amazon Pay、楽天ペイ、銀行・ゆうちょ銀行振り込み(いずれも前払い)、代金引換などが選択可能でした。後払いの場合、支払い期日は商品到着後7日以内と設定されていました。

これまで多くのお客様がスムーズに支払いを済ませていたものの、今年に入ってからは、期日内の入金がないケースが目立つように。特に森岡太悟社長が懸念するのは、「明らかに悪意のある未払い」が増加している点です。手口は巧妙化し、中にはまとめ買いされた商品がインターネット上で転売されているという悪質なケースも確認されています。森岡社長は「食品を転売するとは」と驚きを隠せません。

未払い者に対しては、電話や郵送による督促、弁護士への相談なども試みられましたが、これらの債権回収活動は多大な時間と労力を要するにもかかわらず、ほとんどが回収不能に終わっています。「払えない」と開き直るような態度を取る未払い者もおり、その対応は困難を極めました。

未払いの被害を未然に防ぐため、注文時に過去の滞納履歴を調査する業務も追加されましたが、顧客を疑うことは精神的な負担が大きく、「お客様を信用することと、お店を守ることの両立が難しくなった」と森岡社長は語ります。

限界に達した経営負担と事業者の声

2025年7月だけでもすでに数件の未払い被害が発生しており、このままでは今年の被害総額が100万円近くに達する恐れが出てきたため、白滝製麺は後払いサービスの終了を決断しました。「1件あたり2万、3万でも、積み重なると大きな負担です。もう限界です。零細のうちにはダメージが大きすぎます」と森岡社長は、経営への深刻な影響を訴えました。

森岡社長は、長年利用されてきた郵便振替の後払いサービスが中止となることについて、「便利に使ってくださっていた皆様には申し訳ない気持ちです」と理解を求めつつ、今後はPayPay(ペイペイ)など他の決済方法も導入し、支払い方法の選択肢を増やす体制を検討していることを表明しました。「今後とも白滝製麺の半田そうめんをよろしくお願いいたします」と、今後の支援を呼びかけています。

未払い問題に共通の課題を抱える事業者たち

白滝製麺のこの発表に対し、公式X(旧Twitter)には、「同じことで悩んでいます」「うちは代引きもやめました」といった、未払いに頭を悩ませる他の事業者からの共感の声が多数寄せられました。オンラインショップの中には、自社の「お知らせページ」で未払い者への対応方針を掲載しているところも複数見受けられ、内容証明郵便による督促状の送付、少額訴訟の提起、警察への被害届の提出など、事業者自らが身を守るための対策を講じている実態が浮き彫りになりました。

今回の白滝製麺の事例は、多くの零細企業や個人事業主が直面している「悪質な未払い」という共通の経営課題を改めて浮き彫りにするものです。消費者の信頼に基づく後払い制度が、一部の悪意ある行為によって持続困難となる状況は、健全な商取引の維持にとって深刻な問題であり、今後の社会的な議論が求められます。

情報源:まいどなニュース