大阪・関西万博の運営を担う日本国際博覧会協会は、運営費の黒字化ラインを来場客数2200万人と設定した。開幕から78日で累計1000万人を突破し、客足は順調に見えるものの、採算達成の道のりは不透明だ。その最大の障壁として浮上しているのが、今年の記録的な夏の猛暑である。万博が成功裏に終わるか、それとも「負の遺産」となるか、その行方は夏の気候に大きく左右される。
大阪・関西万博の会場風景。巨大な大屋根リングが特徴的だが、懸念されるは会期中の集客と閉幕後の施設利用だ。
黒字化への挑戦:目標来場者数と現状
万博協会が示す運営費の採算ライン2200万人を達成するには、会期を通じて1日平均12万人のチケット来場者が必要となる。直近のデータを見ると、7月20日から26日の一週間で、関係者を含む来場者数は99万8000人、うちチケット来場者は87万人を記録した。1日当たりの平均来場者数は12万5000人となり、目標値に近い水準を維持している。しかし、黒字化への達成は依然として不確実な状況が続いている。
猛暑の打撃:イベント効果を上回る来場者減少
万博の来場者数には、7月に入って勢いの減退が見られる。7月19日土曜日のチケット来場者13万8000人に対し、翌週26日土曜日は12万6000人と1万人以上減少した。26日には、吉村洋文大阪府知事やタレントの宮川大輔さんも参加し、参加者数と国籍数でギネス世界記録に認定された大規模な盆踊りイベントが開催されたものの、期待された集客効果は限定的だった。
この背景には、会場を襲う猛烈な暑さがある。26日の大阪市は35℃を超える猛暑日を記録。日差しを遮る場所が少ない万博会場では、多くの来場者が日傘や冷感タオル、携帯扇風機で暑さ対策を講じていた。大屋根リングの下の休憩スペースは常に混雑し、疲労した来場者で溢れていた。会場内には80台以上の無料給水器が設置されているが、長蛇の列は解消されておらず、運営側が給水ポイントを増やしても異常な暑さに追いついていないのが現状だ。また、自動販売機がキャッシュレス決済のみに対応している点も、一部の来場者からは不便の声が上がっている。
「ダブル高気圧」が示す酷暑予測:万博への長期的な影
ウェザーニュースが発表した2025年夏の気候予測によると、7月末から8月前半にかけて、全国的に暑さのピークが予想される。特に大阪を含む地域では35℃を超える猛暑日が続き、場所によっては40℃を超える酷暑日となる可能性も指摘されている。この異常な暑さの主要因は、太平洋高気圧とチベット高気圧が同時に張り出す「ダブル高気圧」が日本列島を覆っていることにある。9月に入っても厳しい残暑が続く見込みであり、これは大阪・関西万博の来場者数にとって極めて不利な要因となると予測される。
結論
大阪・関西万博は、目標とする2200万人の黒字化ライン達成に向けて、連日の猛暑という大きな壁に直面している。ギネス記録イベントをもってしても来場者数の減少傾向を覆せず、気象予測も長期的な酷暑を示唆する。「ダブル高気圧」の影響下、熱中症対策の一層の強化や来場者支援策の拡充が急務となるだろう。万博が単なるイベントに終わらず、未来への投資として成功を収め、「負の遺産」とならないためには、この夏の厳しい気候との戦いが鍵を握ることになる。
参照元
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/41c25ffc76da996a26f2be969f758b077869fecb
- 日本国際博覧会協会 公式発表
- ウェザーニュース 気象予報データ