ドライブ中、助手席に座る人がダッシュボードに足を乗せている光景を目にすることがあります。これは単に「行儀が悪い」と感じるだけでなく、実は交通違反に該当し、運転者自身が罰則の対象となる可能性がある行為です。交通違反の罰則は運転者の行動に対するものというイメージが強いですが、同乗者の不適切な行動も運転者の責任として問われることがあるのです。本記事では、助手席で足をダッシュボードにのせる行為がなぜ違反となるのか、その法的根拠、罰則、さらには事故発生時の深刻なリスク、そして車内で求められるマナーと責任について詳しく解説します。
「安全運転義務違反」とは?その定義と罰則
日本の道路交通法第70条には、「車両等の運転者は、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定める「安全運転の義務」があります。この義務には、ハンドルやブレーキの適切な操作だけでなく、車両の状態や同乗者の安全管理も含まれます。例えば、車内に物が散乱していたり、同乗者がシートベルトを着用していなかったり、不安定な姿勢を取っていたりする場合でも、それが安全な運転に悪影響を及ぼすと判断されれば、運転者が「安全運転義務違反」に問われる可能性があります。この違反が成立した場合、普通車では違反点数2点、反則金9000円が科されます。
助手席での「足乗せ行為」が安全運転義務違反となり得る理由
助手席に座る人がダッシュボードに足を乗せる行為は、同乗者の自由だと考える人もいるかもしれません。しかし、安全面から見ると、高く上げられた足がダッシュボード周辺の視界を妨げたり、運転者の注意を散漫にさせたりする可能性があります。助手席の同乗者が不自然な姿勢を取り、それによって安全な運転が妨げられたと警察官が判断した場合、運転者は「運転に必要な注意を怠った」として、前述の安全運転義務違反の責任を負うことになるのです。これは、運転者が車内の状況全体に気を配り、安全を確保する義務があるためです。
車内でダッシュボードに足を乗せ安全運転を妨げる危険な姿勢
軽視できない「足乗せ」による重大事故のリスク
ダッシュボードに足を乗せる行為は、安全な運転を妨げるだけでなく、同乗者自身の命に関わる重大なリスクを伴います。万が一事故が発生しエアバッグが作動した場合、その展開速度は時速100〜300キロメートルにも達します。この驚異的な速度で膨らむエアバッグに、ダッシュボードに乗せた足がぶつかると、膝が顔面や胸部を直撃し、骨折や内臓損傷など、想像を絶するような重篤な傷害を負う危険性があります。
もし大腿(だいたい)部、骨盤、椎骨など人体の重要な組織に重傷を負ってしまえば、治療には膨大な医療費がかかり、後日保険で補償されるとしても、その間の身体的・精神的負担は計り知れません。さらに、事故による後遺症で身体が不自由になり、仕事の変更を余儀なくされるケースも少なくありません。これにより給与条件が悪化し、大幅な収入減につながる可能性もあります。例えば、高収入を得ていたベテランドライバーが、事故の怪我で運転ができなくなり、座ってできる簡単なデスクワークに職を変えた結果、家計が逼迫するといったケースも現実的に起こり得るのです。
まとめ:車内でのマナーと安全意識の重要性
助手席でダッシュボードに足を乗せる行為は、一見何気ない行動に見えても、法的リスクと深刻な身体的危険をはらんでいます。運転者だけでなく、同乗者もまた、車内での自身の行動が運転の安全性に影響を与える可能性があることを認識し、責任ある行動を取ることが求められます。すべての乗員が安全運転を妨げないよう協力し、適切な姿勢を保つことで、交通事故のリスクを減らし、安全で快適なドライブを実現することができます。