共同通信の「不謹慎クイズ」が炎上、タイ・カンボジア国境紛争軽視で波紋

2024年7月30日、一般社団法人共同通信社が公式X(旧Twitter)アカウントに投稿したクイズが「不謹慎すぎる」と大きな波紋を呼んでいます。タイとカンボジアの国境地帯で発生した軍事衝突という、多数の犠牲者が出た深刻な国際問題がクイズの題材にされたことに、インターネット上で非難の声が殺到しました。この一件は、報道機関の情報発信における倫理と配慮の重要性を改めて浮き彫りにしています。

共同通信の公式Xアカウントが表示されたスマートフォン画面共同通信の公式Xアカウントが表示されたスマートフォン画面

物議を醸した「不謹慎クイズ」の詳細

共同通信の公式Xアカウントが投稿したクイズは、以下のような内容でした。

《【突然ですが、クイズです】※ニュースに関心を持っていただきたく出題します。タイ・カンボジア両国が領有を争う寺院遺跡「タムアントム」周辺で軍事衝突した。先に攻撃したのは?》

そして選択肢として《タイ》《カンボジア》《両国とも「相手国が先」と主張》が提示されました。このクイズの元となったのは、タイとカンボジアの国境に位置するプレアヴィヒア寺院周辺、特に「タムアントム」と呼ばれる遺跡一帯での軍事衝突です。この地域は長年、両国間の領有権をめぐる緊張関係が続いており、過去にも武力衝突が発生しています。今回の衝突もその歴史的背景の中で起こったものでした。

犠牲者30人以上、日本の外務省も「渡航中止勧告」

今回のタイ・カンボジア軍事衝突では、軍人だけでなく民間人にも犠牲者が出ており、報じられている死者は30人以上に上ります。この深刻な事態を受け、日本の外務省は「海外安全ホームページ」を通じて、タイとカンボジアの国境地帯における危険情報を「危険レベル3:渡航中止勧告」に引き上げました。海外旅行先として人気の高いタイがこのような危険情報に指定されるのは異例の事態であり、それだけ今回の衝突が重大であったことを示しています。

このような状況下で、犠牲者まで出ている軍事衝突をクイズ形式で扱ったことに対し、ネット上では瞬く間に批判が殺到しました。《カンボジアとタイ両国の国民に対し、無神経で極めて無礼な投稿》《こんなのをクイズにする共同通信、正気? 神経を疑う》《めちゃくちゃナーバスな問題をヘキサゴンみたいなノリで出すなよ》といった声が相次ぎました。批判を受けてか、共同通信の投稿は間もなく削除されましたが、7月31日昼の時点で、この件に関する公式な謝罪コメントは発表されていません。

タイとカンボジアの国境紛争に関する地図と関連ニュース記事の表示タイとカンボジアの国境紛争に関する地図と関連ニュース記事の表示

報道機関としての倫理と責任:紛争の背景とメディアの偏向報道

政治ジャーナリストは、今回の軍事衝突の背景には根深い政治的、文化的な対立が存在し、両国の主張が真っ向から食い違う複雑な状況があると指摘しています。また、日本のメディア報道においては、タイとカンボジアの国力や知名度の差から、タイ寄りの報道が目立つ傾向があるという批判も一部のネットユーザーから見受けられるとのことです。

ジャーナリストは、停戦合意に至ったとはいえ、最も重要なことは「犠牲者の出ている案件を“クイズのネタ”にするのは非常識」であると強調しています。ニュースへの関心を促す意図は理解できるとしても、その題材が人命に関わる深刻な国際問題である場合、情報発信の方法には最大限の慎重さと倫理的な配慮が求められます。

時事ネタ発信の難しさと今後の課題

共同通信のXアカウントは、今回の一件以外にも時事ネタに関するクイズを頻繁に投稿し、ニュースへの関心を喚起しようと努めています。しかし、その目的を達成するためには、選ぶべき「ネタ」とそうでない「ネタ」を明確に区別する厳格な基準が必要です。特に、国際紛争や災害など、人命に関わる悲劇的な出来事を軽視するかのような印象を与えてしまう発信は、報道機関としての信頼性を大きく損なうことになりかねません。

今回の「不謹慎クイズ」炎上事件は、社会に影響力を持つ報道機関が、情報発信を行う上でどれほど繊細なバランス感覚と責任感が求められるかを改めて示すものとなりました。今後、同様の事態を避けるためにも、共同通信には題材選びにおけるより一層の慎重な検討が求められます。

参考文献: