森岡毅氏が仕掛ける沖縄「ジャングリア」:ハワイ超えの可能性と北部開発の衝撃

沖縄県北部、手つかずの自然が広がる「やんばるの森」に、新たな大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」が誕生します。甲子園球場15.6個分という広大な敷地で、大自然と22のアトラクションが楽しめるこの施設は、年間995万人の観光客が訪れる沖縄に、さらなる経済効果と雇用をもたらすと期待されています。総事業費700億円を投じるこのプロジェクトを牽引するのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させたことで知られる“テーマパークの仕掛け人”、マーケティングのプロフェッショナルである森岡毅氏です。なぜ沖縄、そしてなぜこれまで開発が遅れていた北部が選ばれたのか、その戦略的意図に迫ります。

沖縄の新たなテーマパーク「ジャングリア」を手がける森岡毅氏沖縄の新たなテーマパーク「ジャングリア」を手がける森岡毅氏

「ハワイを凌ぐ好立地」森岡氏が語る沖縄の圧倒的潜在力

森岡毅氏の目には、沖縄は世界でも有数の観光地であるハワイをも凌駕する好立地として映っています。沖縄は既に年間約1000万人が訪れる人気観光地であり、これはハワイと同等規模の数字です。しかし、森岡氏はその潜在需要は計り知れないと指摘します。世界地図を見れば明らかですが、ハワイが太平洋の真ん中に位置するのに対し、沖縄は東京、香港、ソウルといったアジアの主要都市から4時間圏内に、実に20億人もの巨大な人口を抱えています。この地理的優位性こそが、沖縄が観光地として爆発的な成長を遂げる可能性を秘めている最大の理由だと森岡氏は強調します。宮本勝浩関西大学名誉教授らによる試算では、ジャングリアの開業がもたらす経済波及効果は、開業後15年間で6兆8000億円に上るとされています。

沖縄から4時間圏内に位置する主要アジア都市の地図:20億人の巨大市場を示す沖縄から4時間圏内に位置する主要アジア都市の地図:20億人の巨大市場を示す

北部開発の牽引役「ジャングリア」:地域経済への具体的な影響

ジャングリアが那覇空港から車で1時間半かかる沖縄北部に建設された背景には、深い戦略があります。これまで沖縄には「沖縄美ら海水族館」や「やんばる国立公園」など北部に魅力的な観光地はありましたが、那覇市を中心とする南部と比較して開発が遅れ、「素通り観光」とも揶揄される状況でした。ジャングリアの開業は、この北部の観光を変革する起爆剤となることが期待されています。

その動きはすでに周辺地域に現れています。北部に工場を構えるオリオンビールでは、ジャングリアの開業に合わせて見学施設を刷新し、“映えるスポット”を設けるなど、観光客誘致に向けた受け入れ態勢を強化しました。また、周辺のホテルでは宿泊客が明らかに増加傾向にあり、「予約が早く入る分、価格も2000円から3000円程度上昇している」とホテルゆがふいんおきなわの藤原崇広総支配人は語り、ジャングリア効果への期待感を表明しています。

雇用創出と人材育成:地域社会への貢献

ジャングリアがもたらすのは、経済効果だけではありません。地元沖縄の雇用創出と人材育成にも大きく貢献すると見込まれています。開業1年目で新たに創出される雇用は、沖縄北部の中心都市である名護市の人口を上回る7万人とも試算されており、地域社会に大きな活力を与えるでしょう。

さらに、地元の名桜大学はジャングリアの運営会社と提携し、学生がパークでインターンシップを行い、単位を取得できるプログラムを導入します。これにより、学生たちは“生きた観光マーケティング”を実践的に学び、沖縄の観光産業を支える人材、さらには日本や世界で活躍できるグローバルな人材へと成長する機会を得られます。名桜大学の砂川昌範学長は、「ジャングリアでの授業を通して実践的な学びを身につけ、沖縄の観光人材、さらには日本や世界で活躍できるような人材になってほしい」と期待を寄せています。

結び

森岡毅氏が手掛ける沖縄の大型テーマパーク「ジャングリア」は、単なる娯楽施設に留まらず、沖縄が持つ地理的優位性と観光の潜在能力を最大限に引き出し、新たな地域活性化のモデルを提示しています。特に開発が遅れていた北部地域にとって、ジャングリアは経済、雇用、人材育成の多方面で大きな恩恵をもたらし、沖縄全体の持続可能な観光発展に貢献するでしょう。この壮大なプロジェクトが、沖縄観光の未来をどのように形作っていくのか、今後の動向から目が離せません。


参考文献