将棋界で誰もが認める実力を持つ棋士たちが、人知れず“場外戦”を繰り広げていた。8月から始まる女流棋士の最高位タイトル戦。その成績次第でプロ編入がかなう「新制度」がスタートするが、あの人気棋士が苦言を呈していたのである。
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羽生善治氏が主導した“新制度”
話は6月6日に都内で行われた日本将棋連盟の「棋士総会」にさかのぼる。
会場では、女流棋士の清水市代氏(56)が新会長に選出。前会長の羽生善治氏(54)が主導した女流棋士のプロ編入を認める「新提案」が、賛成多数で可決されたのだ。
大手メディアは史上初の女性会長誕生と共に、「新提案」によって将棋界の女性進出が加速することへの期待をこぞって報じた。
観戦記者によれば、
「羽生さんの『新提案』によって、今後は女流棋戦の実績だけでプロ棋士として認められることになりました。具体的には、今年8月30日から始まる『ヒューリック杯白玲戦』で、女流最高位タイトル『白玲』を通算5期獲得した女流棋士が、その権利を得られます」
「最後まで藤井さんは納得した表情を見せなかった」
ところが、前述の総会ではひと悶着あったという。
総会に出席した棋士の一人はこう明かす。
「件の議案については、ベテラン棋士らが“羽生さんが提案するのだから”という理由で賛成の意向を示していましたが、採決に入るタイミングで一人の若手棋士が挙手をしたのです」
その棋士とは、竜王・名人など現在、叡王以外のタイトルを独占している藤井聡太七冠(23)。
「総会の参加者は誰もが“藤井さんが手を挙げた”と驚いていました。しかも彼は、最前列に座り、清水新会長や羽生前会長、理事たちと最も近い位置にいた。会場に緊張感が漂う中、藤井さんは“棋力の担保は取れているのでしょうか”などと発言したのです。その口調は、普段テレビのインタビューなどで見られるように淡々として、表情も冷静でした」(同)
別の参加者によれば、
「藤井さんのすぐ後ろには、女流タイトルを分け合う女流棋士の2強が座っていましたが、怯むことなく疑義を唱えたように見えました。彼の指摘に対して、担当理事らは通り一遍の説明を繰り返すばかり。最後まで藤井さんは納得した表情を見せていませんでしたね」