ゴーフルで知られる老舗洋菓子店「神戸風月堂」(神戸市)の公式X(旧Twitter)アカウントが2025年8月6日、大量の「あんこ」を誤発注したとする投稿と、それに続く無料サービス発表を巡り、ユーザーからの批判を受けて謝罪しました。同社は、投稿で使用した画像が生成AIによるものであったことを認め、「誠実さに欠ける内容であった」と釈明しています。この一連の騒動は、企業のSNS運用における透明性と信頼性の重要性を改めて浮き彫りにしました。
「あんこ200kg誤発注」投稿と「特盛あんこ祭り」企画の経緯
問題の発端は、神戸風月堂がXで8月5日に投稿した一連のポストです。同社は「【悲報】拡散希望」「喫茶スタッフより緊急報告」という衝撃的な文言で、「『あ…あんこ、発注間違えました』2kgのはずが200kg届いた?! 冷蔵庫もパンパンで発注担当が青ざめてます お助けくださいっ!」と、あんこの大量誤発注を訴えました。この投稿には、大小さまざまなサイズのあんこ袋や段ボール箱が山積みにされた様子を写した画像が添えられ、「#あんこで店が埋まる」「#発注担当落ち着け」「#なんとかなる」といったハッシュタグが付けられていました。
神戸元町本店はゴーフルで知られる洋菓子店「神戸風月堂」の顔であり、今回のあんこ誤発注騒動の舞台となったカフェ併設店舗の外観。
しかし、その直後には「特盛!あんこ祭り」という企画の開催が発表されました。神戸にあるカフェ併設の元町本店で喫茶メニューを注文すると、「ひんやり冷た~いあんこ」が1皿無料でサービスされるという内容で、「あずきの力でこの夏を元気に乗り切ろう #あんこで店が埋まる #これも愛すべき日常」とメッセージが添えられました。一見すると、予期せぬ事態をポジティブな企画に変えるユーモラスなプロモーションに見えました。
SNS上の厳しい反応:「誤発注商法」「嘘くさい」の声
この「あんこ祭り」企画は一部で歓迎されたものの、発端となった「誤発注」投稿には多くのユーザーから疑問の声が寄せられました。特に、投稿に添付された画像の不自然さが指摘され、生成AIによって作られたものではないかとの疑惑が浮上しました。
神戸風月堂のX投稿で公開された、大量のあんこ袋が積み上げられたとされるAI生成画像。この不自然さが「誤発注商法」疑惑を呼んだ。
「本当に誤発注ですか?」「嘘くさい」「あんこの袋がサイズまばらだ…AI画像説も頷ける」といったコメントが相次ぎ、「生成AIを使った誤発注商法」「善意を食い物にした宣伝に見える」「企業のブランディングとして最悪だよ……」など、その手法に対して厳しい批判が多数寄せられました。消費者の信頼を逆手に取ったマーケティングではないか、という疑念が広がったのです。
神戸風月堂の謝罪と詳細な説明
こうした批判を受け、神戸風月堂は8月6日に改めてXを更新し、謝罪と補足説明を行いました。同社によると、問題のあんこは本店のカフェで試作用として少量を手配する予定だったものが、「手配ミス」により100キロ単位で注文されてしまったと明かしました。糖度が低く賞味期限が短い高品質のあんこを無駄にしないため、SNSを通じてサービスとして提供することを決定したと説明しています。
謝罪文では、「本来であれば、発注ミスそのものが起きないよう徹底すべきところですが、万が一ミスが起きた際には、責任追及ではなく『どう乗り越えるか』『再発防止策』『食材の有効活用』を前向きに考える姿勢を大切にしています」と、企業としての考え方を表明。その上で、「お客様には少しでも楽しく受け取っていただけたらという思いでユーモアを交えた表現を使いましたが、不快に感じられた方がいらっしゃったことを真摯に受け止めております。誠実さに欠ける内容であったことを、心よりお詫び申し上げます」と、表現の配慮不足を認めました。
また、画像に関しての疑惑についても言及。「商品が特定され、仕入先様にご迷惑をおかけする可能性があると判断し、実物に近い生成画像を使用しましたが、説明が不十分であったことも含め、重ねてお詫び申し上げます」と、生成AI画像を用いた理由を説明し、その説明が不十分であったことも重ねて謝罪しました。同社は今後、発信の仕方や表現に一層気を配り、誤解なく伝わるよう改善を重ねていくと述べています。
今回の神戸風月堂の一件は、SNSが企業と顧客をつなぐ重要なツールであると同時に、その運用には高い透明性と倫理観が求められることを示唆しています。ユーモアを交えたプロモーションが時に誤解を招き、企業イメージに大きな影響を与え得ることを、他の企業も教訓とすべき事例と言えるでしょう。
参考資料
- J-CASTニュース「神戸風月堂「あんこ200キロ誤発注」投稿を謝罪 「誠実さに欠ける」「生成画像使用」と釈明」 (2025年8月6日掲載)