韓国の第二の都市として栄えてきた港町、釜山が今、深刻な人口減少とそれに伴う「消滅危機」に直面しています。過去30年間で約60万人もの人口が失われ、空き家や未入居マンションが目立つ中、若者たちは職を求め首都ソウルへと流出しています。一方でソウルは住宅価格が世界トップクラスにまで高騰し、人口集中が続くという極端な状況にあります。この首都圏への一極集中が、地方都市にもたらす深刻な影響とその実態に迫ります。
韓国の深刻な人口減少と地方都市の危機
日本と同様、韓国も少子化による人口減少が社会全体で深刻な問題となっています。中でも、韓国最大の港町として栄え、長らく第二の都市の地位を保ってきた釜山が、韓国政府機関によって「消滅危機地域」に分類されたことは、韓国内に大きな衝撃を与えました。現地を取材すると、至る所で窓が割れたアパートや、誰も住んでいないかのようなマンションの姿が目に飛び込んできます。かつて活気に満ちた都市が、静かにその生命力を失いつつある現状が浮き彫りになっています。
ソウルへの一極集中と住宅価格の異常な高騰
この地方都市の危機と対照的なのが、首都ソウルの状況です。取材班が最初に訪れたソウル中心部では、高層マンションが林立し、その住宅価格の異常なまでの高騰が続いていました。2025年6月に発表された「世界物価マップ」によれば、ソウルのマンション販売価格はニューヨークやロンドンを抜き、世界で4番目に高い水準に達しています。実際に、2025年7月に販売開始された新築マンションのモデルルームでは、84平米の3LDKが1億6000万円を超える価格で取引されており、ソウルの平均マンション価格は過去8年間で倍以上に急上昇しています。にもかかわらず、新築物件の9割以上が半年以内に完売するという過熱ぶりです。
韓国ソウルへの人口一極集中と地方都市釜山の消滅危機を示す俯瞰図
この異常な不動産市場の背景にあるのは、他でもない首都圏への人口一極集中です。インフラがソウルに集中しているため、「ソウルに住むしかない」と語る住民の声は、地方から若者が流出する現状を物語っています。現在、韓国の全人口の半分以上がソウル首都圏に居住しており、このアンバランスな人口分布が、地方都市の「人口空洞化」を加速させているのです。
釜山の現状:「消滅危機地域」の現実
ソウルとは対照的に、釜山の街は静かで、どこか寂しげな雰囲気が漂っています。2024年7月に完成したばかりの市内北部にある新築マンションでさえ、住んでいるのはわずか2世帯のみという衝撃的な光景が広がっていました。地方における新築マンションの入居率は5割程度に留まっており、不動産仲介業者からは「20年前なら新婚夫婦が10組来たが、今は2~3組しか来ない」という悲痛な声も聞かれました。
釜山駅から車で10分ほどの、かつて造船業で栄え、街の中心地だったエリアを訪れると、その衰退は一層顕著です。窓が割れ、建物の一部が崩れ落ちた、まるで廃墟のようなアパートが多数点在しており、かつての賑わいは影を潜めています。これは、釜山が直面する「都市の衰退」と「人口の空洞化」を象徴する光景に他なりません。2050年までに釜山の高齢化率が50%を超える可能性が指摘されており、このままでは「消滅」の危機が現実のものとなるかもしれません。
まとめ
韓国の第二の都市である釜山が直面している「消滅危機」は、ソウルへの極端な人口一極集中が引き起こす深刻な社会問題です。高騰するソウルの不動産価格と、地方都市で進む人口減少、空き家問題は、韓国全体が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。この釜山の事例は、日本を含む他国が直面する地方創生の課題に対しても、示唆に富む警鐘を鳴らしています。
参考文献
- FNNプライムオンライン: 「首都圏へ人口一極集中した影響で第2の都市・釜山が消滅危機」 (https://www.fnn.jp/articles/gallery/914044?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=partnerLink&image=6)
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/2bc78b3b455a81f8636eb28b7f01da2cdd5a0664