米国の主要人工知能(AI)半導体企業であるエヌビディアとAMDが、中国での半導体販売収益の15%を米国政府に支払う協約を締結したことが、英フィナンシャル・タイムズの報道により明らかになりました。この異例の合意は、両社が中国市場への輸出許可を保証されるための条件とされています。
米国政府と半導体企業の異例の協約
フィナンシャル・タイムズ紙によると、エヌビディアは中国専用チップ「H20」の販売収益から、またAMDは「MI308」の販売収益から、それぞれ15%を米国政府に支払う必要があります。米国政府がこれらの収益を何に充てるかは、現時点では明らかにされていません。H20チップは、バイデン政権が課したAIチップ輸出規制に対応し、中国市場向けに性能を調整して開発された製品です。主要な顧客には、バイトダンス、アリババ、テンセントといった中国の大手AI企業が含まれています。
トランプ政権の対中政策転換と背景
本来、トランプ政権下の輸出規制の一環として、H20チップの中国向け販売は2024年4月から中断されていました。しかし、2024年6月にトランプ前大統領がエヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)と会談して以降、対中制裁が緩和される動きが見られました。この会談が今回の協約締結に大きく影響したと推測されています。AMDはフィナンシャル・タイムズ紙のコメント要請に応じませんでしたが、エヌビディアは声明で「我々は米国政府が世界市場参加のために定めた規則を順守する」と述べ、協約への同意を示唆しています。
ホワイトハウスでエヌビディアCEOジェンスン・フアン氏の演説に耳を傾けるトランプ米大統領。AI半導体規制緩和の背景。
「事実上の税金」と「米国への投資」
フィナンシャル・タイムズ紙は、米国企業が輸出規制解除の見返りとして政府に「事実上の税金」を支払うことは前例がないと指摘しています。この取引は、米国に雇用を創出するために、アップルなどの国内企業にも米国投資を強く要求してきたトランプ政権の交渉パターンに合致すると伝えられています。今回の協約は、米国の半導体政策、特にAI技術分野における中国との戦略的競争において、新たな局面を迎える可能性を示唆しています。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/0af14b22440e5e7e5b7367c6640f55c83c14d3a1