高市早苗氏の首相への道:保守層の支持と野党協調の間で高まる課題

次期首相候補としてその名が常に挙がる高市早苗衆院議員(64)が、厳しい局面を迎えている。永田町では自民党の参院選惨敗を受け、石破茂首相(68)への退陣圧力が強まっている状況だ。石破首相が退陣すれば、次に控えるのは自民党総裁選。高市氏は昨年9月の総裁選で石破首相と決選投票までもつれ込み、惜敗した経緯がある。悲願の首相の座を目指す彼女だが、一部メディアからはその「思想の危うさ」を懸念する報道が相次ぎ、首相就任への道は決して平坦ではない。

「思想の危うさ」と参政党との関連性への懸念

高市氏に対し、メディアからは「極右政治家」であるかのように扱われ、首相になった際には参院選で躍進した参政党と連立を組むのではないかという憶測まで飛び交っている。高市氏が保守政治家であることは周知の事実だが、「日本人ファースト」を標榜する参政党は全く別の存在であり、彼女の周囲は火消しに躍起だ。全国紙の政治担当記者は、参政党がホームページ上で公開している「新日本憲法(構想案)」に「主権は国」と読み取れる部分があることを指摘し、いくら参院選で台風の目になったとはいえ、自民党が高市氏をトップに据えて参政党と組むことはありえないと語る。それにもかかわらず、一部で発生した「石破辞めるな」デモの参加者からは、高市氏の首相誕生や参政党との連立を危惧する声が上がっており、こうした状況は来たるべき総裁選において彼女にとってマイナスに作用することは間違いない。

総裁選における高市氏の逆風と他候補の台頭

前回の総裁選で高市氏を担いだ麻生太郎最高顧問は、今回の総裁選では「次の衆院選で勝利できる体制を」という条件を提示している。高市氏を党のトップに据えれば、他党に流れた保守票の一部は自民党に戻ってくる可能性はあるものの、野党との国会での協議が難航する恐れがある。このため、麻生氏が高市氏を再び担ぐかどうかは不透明だ。最近では、高市氏よりも穏健派とされる小泉進次郎氏や、“コバホーク”こと小林鷹之氏を推す声が党内で広がりを見せている。

高市早苗氏の首相への道:保守層の支持と野党協調の間で高まる課題

高市早苗氏、次期首相候補としての表情。自民党総裁選での挑戦を象徴する一枚。

靖国参拝問題:首相就任への最大の障壁

政治評論家の有馬晴海氏は、高市氏が首相になった場合、少数与党として他の党の協力を得られず、法案通過が困難になるとの見方を示している。特に靖国問題は大きな障壁であり、野党は高市氏のような「右翼の政治」に加担することを拒否するだろう。石破首相が維新や立憲、国民民主党との協力を得て法案を成立させてきたのに対し、高市氏では国会運営が厳しくなると指摘する。靖国参拝は、高市氏を支持する一部の保守層や参政党、保守党、国民民主党の一部からは賛同を得られるものの、国会全体を運営する上では極めて難しい課題だ。

8月15日の終戦記念日が近づく中、高市氏の行動が注目されている。彼女は毎年、靖国神社に参拝しており、今年も春季例大祭に合わせて玉串料を私費で納め、「祖国を守り抜くことの困難さに直面している中で、国策に殉じられた方々の御霊に対して、心から深く感謝の誠をささげた」と語った。昨年9月の総裁選で「総理になっても靖国に行く」と明言したことが、最終的に響いたとされる。総裁選後、党の重鎮から「総理になりたいのなら靖国の話はするな」と釘を刺されたとも報じられており、今後彼女がどのようにバランスを取っていくかが焦点となる。永田町関係者は、彼女が参拝をしなければ支持する保守層を落胆させ、参拝すれば中国などを念頭に国際社会との関係性を危ぶむ議論が起きると指摘する。

まとめ

参院選の応援演説で「私なりに腹をくくった。もう1回、党の背骨を入れ直す。そのために戦う」と発言し、一番乗りで自民党総裁選への意欲を見せたと受け止められた高市早苗氏。しかし、その保守的な政治姿勢、特に靖国参拝問題や参政党との関連性の憶測が、首相への道を険しいものにしている。党内外からの逆風や、より穏健な候補への待望論が広がる中、憲政史上初の“女性宰相”への道のりは遠く、多難を極めると言えるだろう。

出典: FRIDAYデジタル (Yahoo!ニュース配信)