国立青少年教育振興機構が日本と米国、中国、韓国の高校生を対象に、2024年9月から25年1月にかけて、科学への意識と学習についての比較調査を実施した。25年7月に公表された結果では、日本の高校生の意識には他の3カ国とは異なる特徴があることが明らかとなっている。
【図表】「社会に出たら理科は必要ない」と考える日本人は世界と比べても多い
何よりも、理数系や理科の実用性や必要性に対する認識の低さが気になる。まず、日本の高校生は、「数学」を将来に役立つと思う科目と回答した割合が39.9%で、米中の6割強に比べて20ポイント強低い。さらに「社会に出たら理科は必要なくなる」について、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した割合は、日本が45.9%で、4カ国中最も高くなっている。
その他にも、日本の高校生の学習意欲が消極的だったり、体験型の学習活動の割合が低いとか、デジタル技術の実践活用は4カ国の中で最も低い水準となっているなど、気になるデータもある。また、自分にとって、「科学の技術や知識を学ぶことは難しいことである」の割合が4カ国中最も高い。
こうした質問には、もしかしたら日本の高校生には「自己肯定感は低めで答えておこう」とか「意識が高いなどと自慢げに答えるのは格好悪い」といった、心理的、文化的、あるいは時代的なバイアスが作用していると考えることは可能だ。
けれども、冒頭紹介した「社会に出たら理科は必要なくなる」という意識というのは、心理バイアスでは説明が難しい。あくまで調査だとはいえ、日本の高校生の相当数が「そのように思っている」のであれば、これは深刻な問題だ。日本では官民挙げて「STEM教育」の強化を国策としているが、当事者である高校生がその必要性を感じていないのであれば、効果は限られてしまう。
その一方で、高校生の段階では数学や理科の学力を比較すると日本の高校生は依然として世界のトップレベルにある。勉強ができても実社会に生かすことができなければ、国としての発展はなくなってしまう。一体何が問題なのだろうか。