共同通信がAIフェイク画像を配信、メディアの信頼性と生成AIの課題

生成AIが作り出すフェイク画像や動画がインターネット上で蔓延する現代において、その危険性を繰り返し警鐘を鳴らしてきたメディア自身が、真偽を見抜けずに「提供写真」として配信してしまう事態が発生しました。この騒動の舞台となったのは共同通信です。配信された写真に対し、加盟社から「AIによる合成ではないか」との問い合わせがあり、社内調査の結果、問題の写真は取り下げられ、「おわびと訂正」を発表するに至りました。

屋久島ウミガメ保護報道における「タヌキ画像」の真偽

問題となったのは10月20日に共同通信が配信した「タヌキからウミガメ守れ 屋久島、狙われる卵と子 実態調査、捕獲作戦も」という見出しの記事でした。世界有数のウミガメ産卵地である鹿児島県屋久島で、島外から持ち込まれた国内外来種であるタヌキが、ウミガメの卵や孵化直後の子ガメを食い荒らしている現状を報じる内容です。記事には、タヌキが子ガメをくわえているとされる写真が複数枚添えられていました。

南日本新聞からの指摘と共同通信の対応

事の発端は10月24日深夜、共同通信の加盟社である南日本新聞から「配信写真が生成AIで作成されたものではないか」との確認要請があったことでした。特に問題視されたのは、タヌキが砂浜でウミガメをくわえている姿が鮮明に映ったとされる今年8月撮影の一枚です。この写真が、2013年に監視カメラで撮影された同様の画像と比較してあまりにも鮮明であったことから、監視カメラ画像を加工したものとの疑念が生じたのです。当初、共同通信社内には「監視カメラの性能向上によるもの」といった楽観的な見方もあったとされています。また、朝日新聞も共同通信より早い10月上旬に同じ写真を掲載していましたが、「見えやすいように画像処理されています」との注釈を加えていました。しかし、共同通信は最終的に写真がAI加工されたものであると認め、訂正とおわびを発表しました。

生成AI時代のメディアの挑戦と沢井社長の提言

この「AIフェイク画像」の配信は、共同通信の現場に大きな衝撃を与えました。しかし、こうした出来事が起きる中で、沢井俊光社長は今月4日、全社員に対し生成AIの積極的な活用を呼びかけたといいます。これは、AIの危険性を認識しつつも、その技術を情報収集や編集作業に活用することで、業務効率化や新たなコンテンツ創出の可能性を探るという、メディアとしての挑戦的な姿勢を示唆しています。

今回の事態は、生成AI技術の進化がもたらす情報環境の変化に対し、メディアがどのように向き合うべきかという喫緊の課題を浮き彫りにしました。情報の真偽を見極める能力の重要性が高まる一方で、AIを効果的に活用するバランスが求められています。共同通信の経験は、メディアが「信頼性」を維持しつつ、新たな技術と共存していくための試行錯誤のプロセスとして、注目されることでしょう。

Source link