長崎県で生まれ育った俳優の長濱ねるさんは、8月9日の登校日にクラスメートと共に黙祷を捧げる「平和学習」が幼い頃からの日常でした。しかし、東京に出てきてその意識の違いに直面し、原爆の悲惨さを次世代に語り継ぐことへの深い使命感を抱くようになったと明かしています。原爆がもたらした一瞬での世界、生活、人間の変貌は、計り知れない恐怖だと長濱さんは語ります。
東京と長崎、意識の差が育んだ「継承への使命感」
長濱さんが東京で感じたのは、故郷長崎との平和意識の隔たりでした。「8月9日なのに、周りの誰も黙祷していない」という現実に直面し、大きな衝撃を受けました。この体験こそが、長濱さんの心に「原爆の記憶を伝えていかなければならない」という強い使命感を芽生えさせるきっかけとなりました。彼女は、原爆の恐ろしさは、わずか一瞬で世界、人々の暮らし、そして人間そのものが不可逆的に変えられてしまう点にあると深く認識しています。
祖母の言葉が示す「被爆の記憶」の重み
学校の宿題で、被爆者である祖母から体験談を聞いた際、長濱さんの心には忘れられない言葉が残りました。祖母は原爆投下の瞬間、閃光の中で逃げ惑い、防空壕に身を隠した断片的な記憶を語った後、「あまり思い出したくもないし、話したくない」と口にしたのです。その言葉は、被爆の記憶がいかに恐ろしく、苦しいものであるかを長濱さんに痛感させました。同時に、学校で被爆体験を語り継ぐ「語り部」の方々が、どれほどの精神的エネルギーを費やして真実を伝えているのかを深く理解する契機にもなりました。昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した際には、長濱さんも大きな喜びを感じ、「バトンを受け継ぎ、私たちもきちんと語り部になっていかなければならない」という決意を新たにしました。
長濱ねる氏、被爆の記憶継承と平和への使命感を語る
「news zero」で挑む、戦争未経験者としての情報発信
今年4月から日本テレビ系の報道番組「news zero」の火曜パートナーを務める長濱さんは、自身の役割に真摯に向き合っています。戦争を経験していない世代であるからこそ、「自分の体重が乗っていない言葉になりがち」であることへの危機感を抱いています。そのため、現場に足を運び、自らの目で見て、耳で聞き、感じたことを「自分の言葉」として伝えたいと強く願っています。長崎で学んだ平和の価値や被爆の現実が、全国的には必ずしも当たり前ではないことを認識し、一つひとつの情報を丁寧にかみ砕いて伝えることにも意識を注いでいます。
戦後80年、被爆体験を未来へ繋ぐ「今」の重要性
間もなく迎える戦後80年という節目は、長濱さんにとって被爆の記憶を継承する重要な機会であると捉えられています。今だからこそ聞ける貴重な話があるはずだと信じ、被爆された方々の目線で、私たちが平和に暮らし、世界から戦争をなくすためにどのように行動すべきかを聞くことができれば、それは何よりありがたいことだと語ります。被爆者の高齢化が進む中で、その尊い証言やメッセージを未来へと確実に受け取らなければならないという長濱さんの思いは、日ごとに強まっています。
参考文献
- 読売新聞オンライン (元の記事掲載元)
- Yahoo!ニュース (掲載プラットフォーム)