麻生太郎氏の動向が鍵を握る:総裁選前倒しと自民党内政局の深層

自民党内で総裁選の前倒しが現実味を帯びる中、党内唯一の派閥を率いる麻生太郎最高顧問の動向に、今最も注目が集まっています。その存在感は、今後の党内政局の行方を左右するカギを握るとされ、「ポスト石破」候補と目される有力議員らが次々と麻生氏のもとを訪れています。しかし、麻生派が近年、総裁選で支持候補を一本化できていない現実もあり、派内が「一枚岩」となれるかどうかも重要な焦点です。

石破首相への「退陣」要求の真意と麻生氏の不満

去る7月23日、東京・永田町の党本部で、麻生氏は菅義偉、岸田文雄という両元首相経験者と共に、石破茂首相と対峙しました。関係者によると、麻生氏は「石破自民党では選挙に勝てないことが明らかとなった。対応すべきだ」と強く迫ったとされています。自身の首相時代に石破首相から退陣を突きつけられた経緯がある麻生氏ですが、直接的に「退陣」という言葉を首相に使うことは避けた模様です。その2日後、麻生派幹部らとの会合で、麻生氏は周囲に「(首相は)一方的に説明するだけで、進退のことは何も言わなかった」と不満を漏らしています。

唯一残る麻生派の存在感と「ポスト石破」候補の動き

麻生太郎氏の動向が鍵を握る:総裁選前倒しと自民党内政局の深層
麻生太郎自民党最高顧問、党内政治の要としてその発言が注目される

派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受け、党内の多くの派閥が解散する中、麻生氏は自身の派閥の存続を決断しました。参院選では複数の派閥所属候補が落選したものの、現在も党所属議員295人のうち43人を擁する「塊」として、党内で確かな存在感を放っています。このため、昨年の総裁選に出馬した「ポスト石破」候補たちは、麻生氏との関係を極めて重視する傾向にあります。先月23日には高市早苗前経済安全保障担当相が、今月6日には小泉進次郎農林水産相がそれぞれ麻生氏を訪問。茂木敏充前幹事長に至っては、麻生氏との会合を繰り返し重ねていると報じられています。

麻生派内の「一枚岩」の課題:河野太郎氏と次期総裁選の展望

一方で、麻生派には課題も存在します。直近2回の総裁選では、麻生派は支持候補者の一本化を見送っています。派内には総裁選に3回出馬経験のある河野太郎前デジタル相が所属しているものの、政策的な違いから、派幹部からは「誰か担ぐとしても、河野氏はない」との声が聞かれるなど、河野氏でまとまる様子は見られません。麻生氏自身は、前回の総裁選の決選投票で高市氏を支援したとされていますが、次期総裁選でも同様の支援を行うかどうかは、依然として不透明な状況です。

総裁選前倒しの条件と石破首相の継続姿勢

自民党は総裁選前倒しの是非の検討に入っていますが、党則第6条第4項では、党所属の国会議員と都道府県連の代表各1人の総数の過半数の要求があった場合にのみ、総裁選が行われると規定されています。現時点では、この要件を満たす要求が集まるか否かは、依然として不透明な状況です。強まる退陣圧力に対し、石破首相は日米関税交渉などを理由に、当面続投する姿勢を崩していません。麻生氏も最近、周囲に「辞めさせるのは、簡単じゃねえぞ」と漏らしており、首相の退陣には一筋縄ではいかないとの見方を示しています。

結論

麻生太郎氏が率いる唯一の派閥は、自民党の次期総裁選、そして党内政局において極めて重要な影響力を持ち続けています。彼の発言や動向は、有力な「ポスト石破」候補らの戦略、そして麻生派内での結束の行方を左右するでしょう。総裁選前倒しの可能性が浮上する一方で、石破首相の続投姿勢も依然として強く、党内は複雑な局面を迎えています。麻生氏が今後の政局の「カギ」をどのように動かすのか、その動向から目が離せません。

参考文献