豊洲の「第一世代」タワマン住人が語る:老朽化と長期居住で見えてきた課題とは?

富の象徴としてその数を増し続けるタワーマンション(タワマン)は、都心だけでなく郊外や地方にも広がりを見せています。しかし、本格的な建設が始まってまだ30年程度しか経っていないため、「長く住んだからこそ見えてくる現実」や「老朽化に伴う潜在的な問題」については、十分に語られてこなかったのが現状です。本連載では、比較的築年数の長い、いわゆる「タワマン第一世代」の住民に焦点を当て、彼らが直面する現在の課題を深掘りします。そして、将来多くのタワマンが抱えるであろうリスクを具体的に明らかにしていきます。

豊洲:タワーマンションの象徴的な街

初回となる今回は、数あるタワマンエリアの中でも特に有名な「豊洲」のタワマンに住む方にお話を伺いました。7月下旬、東京メトロ有楽町線とゆりかもめが交差する豊洲駅に降り立つと、その視界にはスタイリッシュなオフィスビルと高層タワーマンションが広がり、まさに「タワマンの街」としての存在感を強く印象付けられます。駅周辺や豊洲交差点を囲むように林立する高層建築群は、その規模と密度において日本を代表するタワマンエリアとしての地位を確立しています。駅から数分歩くと、築十数年が経過した50階建てを超える高層タワマンが見えてきます。この建物は、その後の豊洲におけるタワマン建設ラッシュの先駆けとなった、まさに「第一世代」を代表する存在です。

豊洲駅前:高層ビルと低層建築物が混在する街並み。タワーマンション群の奥に広がる多様な風景。豊洲駅前:高層ビルと低層建築物が混在する街並み。タワーマンション群の奥に広がる多様な風景。

エントランス近くで待っていると、驚くほど多様な世代の人々が出入りしていました。タワマン居住者には家族連れのイメージが強いかもしれませんが、実際には単身者から高齢者まで、幅広い層が生活を営んでいることが伺えます。

不動産のプロが語る「タワマン居住10年超」の現実

約束の時間に現れたのは、このタワマンの40階台に居住する不動産業界勤務の男性(44歳)です。彼は「豊洲のタワマンに住み始めて十数年になりますが、あっという間に月日が経ちました」と笑顔で語ります。今回取材に協力していただいた男性が住むタワマンは、1000世帯以上が居住する大規模物件です。賃料は20万円台後半から30万円台が中心で、中古販売価格は2億円を下らない、築20年弱の建物です。

男性がタワマンを新築で購入した経緯は明快でした。「私自身が不動産業界にいたこともあり、当時は独身でしたが、賃貸で毎月10万円もの家賃を払い続けるよりも、早く自分の資産として購入する方が賢明だと考えていました」と彼は話します。購入当時、豊洲は現在ほどメジャーな地域ではありませんでしたが、東京都心へのアクセスの良さ、特に池袋などの主要駅へ乗り換えなしで行ける利便性が注目され始めていた時期でした。このような先行投資の考え方が、彼のタワマン購入を後押ししたのです。

取材協力男性のタワーマンション:豪華なエントランスが来訪者を出迎える。豊洲の高層マンションの象徴的な入り口。取材協力男性のタワーマンション:豪華なエントランスが来訪者を出迎える。豊洲の高層マンションの象徴的な入り口。

結論:タワマン長期居住が問いかける未来

本記事では、タワーマンションが「富の象徴」として急速に普及する一方で、その長期居住や老朽化に伴う具体的な課題が見過ごされがちであることを指摘しました。豊洲の「タワマン第一世代」に住む不動産関係者の生の声を通じて、タワマンの歴史がまだ浅いゆえに顕在化していない問題の存在が浮き彫りになります。今後、より多くのタワマンが築年数を重ねていく中で、修繕、管理組合運営、資産価値の維持など、多様な側面で新たな課題が浮上するでしょう。この連載は、これらの喫緊のテーマを深く掘り下げ、タワマン居住の「今」と「未来」を読者の皆様と共に考えていくことを目的としています。


参考文献