トヨタ・ランドクルーザー300、日本を超え世界販売を牽引する意外な国とは

トヨタのフラッグシップSUVであるランドクルーザー300シリーズは、北米市場では未導入ながらも世界中で堅調な販売を維持しています。しかし、2024年の販売台数において、同モデルを牽引する意外な国が明らかになり、その市場動向は自動車業界の注目を集めています。

2024年世界販売の現状と市場分析

Carindustryanalysisのフェリペ・ムニョス氏がまとめたデータによると、トヨタは昨年、ランドクルーザー300シリーズを合計10万5700台販売しました。これは2023年と比較してわずか2%の減少に留まっています。この堅調な販売実績の裏には、特定の国や地域が大きな影響を与えています。

オーストラリアが最大の市場に

ランドクルーザー300シリーズの2024年の世界販売ランキングを見ると、オーストラリアが1万3790台でトップに立っていることが判明しました。これは1万3174台で2位となった日本をわずかに上回る数字です。長年にわたりランドクルーザーの高い需要を誇るオーストラリアが、本国日本を抑えて最大の市場となったことは注目に値します。

2024年トヨタ・ランドクルーザー300の世界販売台数ランキングを示すグラフ。オーストラリアが首位、日本が2位、サウジアラビアが3位に続くデータ。2024年トヨタ・ランドクルーザー300の世界販売台数ランキングを示すグラフ。オーストラリアが首位、日本が2位、サウジアラビアが3位に続くデータ。

中東市場の圧倒的シェア

オーストラリアが単一国としてトップに立った一方で、中東市場全体ではランドクルーザー300の世界販売の59%を占める圧倒的なシェアを維持しています。この地域は、砂漠などの過酷な環境下での走行性能や信頼性が重視されるため、ランドクルーザーの主要な需要地となっています。国別では、サウジアラビアが1万2381台で世界3位にランクイン。その他、アラブ首長国連邦(UAE)(9319台)、オマーン(8882台)、カタール(8685台)、クウェート(8028台)、イラク(7133台)、ヨルダン(2849台)といった国々が、揃ってトップ10入りを果たしています。

オフロードを走行するトヨタ・ランドクルーザー300のフロント部分。堅牢なデザインと優れた走行性能を象徴。オフロードを走行するトヨタ・ランドクルーザー300のフロント部分。堅牢なデザインと優れた走行性能を象徴。

ロシアにおける驚きの販売動向

オーストラリア、日本、そして中東諸国以外で世界販売のトップ10にランクインしたのは、意外にもロシアのみでした。ウクライナ紛争勃発に伴い、トヨタはロシアへの公式納車を停止しているにもかかわらず、ランドクルーザー300シリーズは3682台を記録し、9位となっています。これは、非公式ルートや並行輸入を通じて需要が満たされている可能性を示唆しており、制裁下の市場における自動車販売の複雑な側面を浮き彫りにしています。

北米未導入の影響と潜在的成長

ムニョス氏は、もしトヨタがランドクルーザー300を米国とカナダで販売していれば、その世界販売台数はさらに増加していた可能性があると指摘しています。北米市場では、より小型のランドクルーザー250シリーズや、高級ブランドであるレクサスLXが展開されており、300シリーズの投入は戦略的に見送られています。しかし、世界的な需要の高さを鑑みると、北米導入によるさらなる市場拡大の可能性は大きいと言えるでしょう。

ランドクルーザー300の進化と将来展望

ランドクルーザー300シリーズは、TNGA-Fラダーフレームアーキテクチャを採用し、2021年から世界市場に投入されています。トヨタは、この人気モデルの競争力を維持するため、継続的な改良を計画しています。

TNGA-Fプラットフォームと今後の改良

2025年モデルではデジタルインストルメントクラスターが導入され、ドライバーへの情報提供がより高度化されます。さらに注目すべきは、2026年モデルでセルフチャージングハイブリッドパワートレインオプションが採用されることです。これに伴い、スタイリングも若干の変更が加えられる予定で、現代の市場ニーズに合わせた進化が図られます。

トヨタ・ランドクルーザー300の高級感ある室内、運転席と助手席の様子。最新のデジタルインストルメントクラスターを搭載。トヨタ・ランドクルーザー300の高級感ある室内、運転席と助手席の様子。最新のデジタルインストルメントクラスターを搭載。

史上最強のハイブリッドパワートレイン

導入予定の電動化モデルは、3.5L V型6気筒ツインターボエンジンと電気モーターを組み合わせ、合計出力464ps/341kWを発揮します。これはランドクルーザー史上最もパワフルなパワートレインとなり、環境性能と走行性能の両面で大きな進化をもたらすことが期待されます。

夕暮れの砂漠を駆け抜けるトヨタ・ランドクルーザー300のリアデザイン。パワフルなハイブリッドモデルの登場を予感させる。夕暮れの砂漠を駆け抜けるトヨタ・ランドクルーザー300のリアデザイン。パワフルなハイブリッドモデルの登場を予感させる。

競合車種との動向

ランドクルーザー300のこれらの改良とハイブリッドオプションの導入は、今後の販売に好影響を及ぼす可能性が高いと見られます。しかし、市場での競争も激化しています。特に、長年のライバルである日産「パトロール」が15年ぶりに新世代モデルに生まれ変わったことは、今後のSUV市場の勢力図にどのような影響を与えるのか、その動向が注目されます。

結論

トヨタ・ランドクルーザー300は、北米未導入という制約があるにもかかわらず、世界中で非常に強い需要を誇るモデルです。2024年の販売データは、オーストラリアが日本の販売台数を上回り、最大の市場となったという意外な事実を示しました。また、中東諸国が圧倒的な販売シェアを占め、ロシアでの販売が依然として無視できない規模であることも明らかになりました。TNGA-Fプラットフォームの採用、デジタルインストルメントクラスターの導入、そして史上最強となるハイブリッドパワートレインの投入など、ランドクルーザー300の継続的な進化は、今後も世界市場でのその地位を確固たるものにするでしょう。一方で、日産パトロールのような競合の動向も注視しつつ、トヨタのグローバル戦略がどのように展開されるか、引き続き注目が集まります。

参考資料:

  • Carindustryanalysis, Felipe Munoz
  • APOLLO (Yahoo!ニュース掲載記事より)
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