ロシアのドンバス割譲要求:ウクライナ戦争の和平条件とウクライナの警戒

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ戦争の和平条件としてウクライナ東部ドンバス地方の割譲を要求した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの「領土的野心」がドンバスで収まらず、さらなる侵攻につながると警戒している。

ドンバス地方の背景とロシアの「大義」

ドンバスは帝政時代からロシア系労働者が集まった炭鉱地帯で、ロシア語使用率が高い。プーチン政権は約3年半前、「固有の領土」という大義を掲げ侵攻に踏み切った。侵攻3日前の2022年2月21日、親ロシア派かいらい政権を通じて支配するドネツク、ルハンスク両州の独立を一方的に承認。「独立国」からの支援要請を建前とし、両州全域の「解放」を宣言して侵攻を正当化した。

ウクライナ東部ドンバス地方で砲撃を受け炎上する家屋。2022年4月のロシア侵攻による破壊状況を示す。ウクライナ東部ドンバス地方で砲撃を受け炎上する家屋。2022年4月のロシア侵攻による破壊状況を示す。

戦略的意図と内政的側面

背景には、北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ拡大へのプーチン政権の強い懸念がある。ドンバス獲得自体に戦略的利益があるかは不明ながら、対内的には「NATOへの恐れ」より「祖国解放」の方が世論の支持を得やすいと判断された。

過去の経緯と現在の局面

2014年クリミア半島を「無血開城」させたロシアは、直後にドンバスへ影響を広げたが、ウクライナの抵抗で15年の停戦合意時、親ロシア派支配は一部に留まった。22年キーウ制圧失敗で侵攻が長期化する中、ドンバス獲得は「勝利」を自国民に誇る最低限の理由となっている。

ウクライナ側の警戒と懸念

プーチン政権の要求は「非武装化」「中立化」など多岐にわたり、ウクライナには到底のめない内容だ。ゼレンスキー氏は最近「2度あることは3度ある」と発言し、ドンバス割譲が新たな侵攻の足掛かりとなり、過去の軍事力行使が繰り返されかねないと危機感を示している。

ロシアによるドンバス割譲要求は、ウクライナ戦争の交渉を困難にしている。ウクライナは過去の経験からロシアの領土的野心に不信感を抱き、いかなる和平合意も将来の安全保障上の脅威になり得ると考えており、この対立は国際社会の重要課題であり続ける。

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