日本の防衛力と中国の軍事的脅威:最新の日中軍事バランス

トランプ、プーチン両大統領による米露首脳会談の行方が注目された背景には、侵略を受けたウクライナが領土を失う形での和平に傾く懸念があった。もし「力による現状変更」が既成事実化すれば、ロシアを模倣する国家が現れてもおかしくない。特に懸念が大きいのが、中国の軍事的台頭である。この動きは、日本の安全保障に直接的な影響を及ぼしている。

緊迫化する日中間の軍事的な動き

今年6月、中国の空母2隻が太平洋に展開する中、日本の自衛隊が対抗するかのように尖閣諸島周辺空域で、複数のF-2戦闘機から対艦ミサイルによる敵空母攻撃訓練を実施していたことが明らかになった。これは、日中双方が「演習」の名の下に軍事力を示し合う、まさに鍔迫り合いと呼べる状況だ。軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、この状況についてこう語る。「中国は米国に対抗して覇権を広げようとしており、軍事的には西太平洋を勢力下に収めることが悲願です。その太平洋への出口を塞ぐ位置にある日本は、地政学的に中国の軍事的圧迫を受けることになります。特に脅威なのは中国兵器の著しい近代化。かつて中国人民解放軍は、兵力は多くても旧式の兵器ばかりで各国から“恐るるに足らず”と見られていた。しかし、この10年あまりで驚くほど近代化しているのです」。

日本の防衛力を示す護衛艦いずも。中国の軍事的脅威に対する日本の海上自衛隊の役割を象徴する日本の防衛力を示す護衛艦いずも。中国の軍事的脅威に対する日本の海上自衛隊の役割を象徴する

日本の防衛力強化と中国の圧倒的戦力

こうした中国の軍事的脅威の高まりに対し、専守防衛を原則とする日本は、防衛費の倍増方針を決定した。井上氏は「弾道ミサイルに対する迎撃能力を高め、米国からF-35戦闘機やトマホークミサイルを購入するなどしている。現段階で軍事的圧迫にどこまで耐えられるのか。彼我の装備の比較や有事のシミュレーションを行い、自衛隊の何が強みで何が足りていないのかの現状を正確に把握しておく必要がある」と指摘する。

週刊ポストは井上氏の分析に基づき、日中の軍事力を比較した。陸上自衛隊の兵力約13万人に対し、中国は100万人。海上自衛隊の艦船は139隻、中国は690隻。航空自衛隊の戦闘機など370機に対し、中国は3370機と、中国が日本を圧倒している。さらに中国は、600発の核弾頭を持つと推定されている。

井上氏は中国海軍の著しい発展にも言及する。「中国海軍は今や、遼寧、山東、福建(試験運転中)の3隻の空母を保有している。遼寧は、建造途中の旧ソ連製空母をウクライナから購入し、自国の航空母艦として再生、そのデータをもとに山東を自力国産した。福建は、アメリカ海軍の航空母艦だけが装備している電磁カタパルトを持っているとみられている」。これは、中国が海洋覇権の確立に向けて着実に歩を進めている証拠である。

結論

中国の軍事的台頭は、日本の安全保障にとって喫緊の課題であり、その脅威は現実のものとなっている。現状の戦力差を正確に把握し、日本の防衛力を戦略的に強化していくことが不可欠だ。

出典:Yahoo!ニュース (週刊ポスト)