元農水次官「つらい人生送らせた」 長男殺害公判で





熊沢英昭被告

 東京都練馬区の自宅で長男を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官の無職、熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判の第2回公判が12日、東京地裁(中山大行裁判長)で開かれ、被告人質問が行われた。熊沢被告は「主治医にアドバイスを求めるべきだった。息子にはつらい人生を送らせてかわいそうに思っている」と述べた。

 熊沢被告は、発達障害だった長男の英一郎さん=当時(44)=が苦手なごみの片づけをするために、月に1回程度、1人暮らしの家を訪れたと説明。就職氷河期と重なるなどして就職先が見つからなかった英一郎さんに、製パンやアニメの学校に通わせたほか、「生きがいを持たせたい」とコミックマーケットへの出品を勧め、会場で売り子として手伝ったこともあったという。

 ただ英一郎さんが自宅に戻った今年5月、熊沢被告に暴力を振るってから2人の関係に変化が生じた。

 熊沢被告は、英一郎さんから事件当日に「殺してやる」と言われたとし、「殺されると思って無意識に包丁を取りに行った」「殺していなければ私が殺されていた」と振り返った。

 一方で、事件前に「ほかに方法はないと思う」とする手紙を書いたことや、インターネットで「殺人罪 執行猶予」と検索した意図に関しては「記憶がない」などと説明。暴力を受けてから外部に全く相談しなかった理由を検察官に問われると「精神的なショックがあった」とうなだれた。

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