「夫婦合わせて年収1200万円」と聞くと、多くの人が高収入で経済的に余裕のある暮らしを想像するでしょう。しかし、都心で子育てをしながら共働きをしている家庭にとって、果たしてこの年収は本当にゆとりのある生活を意味するのでしょうか。本記事では、まず「パワーカップル」の一般的な定義に触れ、その上で都心で子どもを育てる世帯が直面する具体的な家計の負担と現実的な生活費について、詳しく解説します。
「パワーカップル」とは? その定義と日本の実情
「パワーカップル」という言葉は、一般的に「高学歴・高収入の共働き夫婦」を指す際に使われます。特に、夫婦双方が高水準の年収を得ているケースに多く用いられる傾向があります。語源はアメリカのビジネスシーンで使われ始めた「影響力や名声のある2人組」を意味するPower Coupleですが、日本ではその経済的な側面に注目されることが大半です。
明確な定義は存在しないものの、日本では夫婦それぞれが年収700万円以上、世帯全体で年収1400万円以上が「パワーカップル」の一つの目安とされる傾向があります。金融機関や不動産業界などでは、こうした高収入の共働き世帯をターゲットにした住宅ローンや資産運用商品、サービスが展開されており、特定のライフスタイルの象徴としても扱われることがあります。この定義に照らし合わせると、夫婦で「年収1200万円」という収入は、パワーカップルの下限にぎりぎり達するか、わずかに及ばない水準と言えるでしょう。例えば、「夫婦それぞれが年収600万円ずつ稼ぐ世帯」と捉えれば、一般的な共働き家庭と大きく変わらないと感じるかもしれません。
都心で子どもを育てる家庭の具体的な支出内訳
たとえ世帯年収が1200万円という高水準であっても、都心で子育てを行う家庭ではその支出の負担が非常に大きくなるのが実情です。特に家計に占める比重が大きいのは、住居費です。例えば、東京23区内で3LDK程度の賃貸物件に住む場合、家賃相場は月25万円から30万円程度とされています。分譲マンションを購入した場合でも、住宅ローンの返済に加えて管理費や修繕積立金、固定資産税などがかかり、結果的に賃貸と同様かそれ以上の月々の負担が発生することが珍しくありません。
次に大きな支出となるのが、保育費や教育費です。文部科学省の調査によると、幼稚園が私立、小学校から高校が公立の場合でも、子ども1人あたり15年間でかかる教育費の合計は約647万円、年平均で約50万円に上るとされています。さらに、都心部では中学受験を視野に入れた塾通いや、私立の中高一貫校への進学を選択する家庭も多く、その場合は教育費が上記金額を大幅に上回ることが一般的です。
このほかにも、都心生活では公共交通機関の利用が多い一方で、マイカーを所有すれば駐車場代、自動車保険、車検などの維持費がかさみます。日常的な食費や日用品費、子どもの習い事にかかる費用、そして家族のレジャー費用や予備費なども考慮すると、年収1200万円であっても、毎月の家計は常に厳しい状況にあり、貯蓄や将来のための資産形成までなかなか手が回らないと感じる家庭も少なくありません。
都心で子育てをする共働き夫婦が、年収1200万円でも家計にゆとりを感じにくい状況を考える様子。
まとめと家計管理の重要性
本記事で解説したように、夫婦で年収1200万円という高収入を得ていたとしても、都心で子育てを行う家庭においては、住居費や教育費といった多額の支出が常に伴います。そのため、必ずしも経済的な余裕がある「パワーカップル」の定義には当てはまらない、あるいは期待されるほどのゆとりを感じられないのが現実です。将来のライフプランや資産形成を見据える上では、収入が高いからといって安心するのではなく、より計画的で具体的な家計管理と支出の見直しが不可欠と言えるでしょう。
参考情報
- Yahoo!ニュース: 夫婦で「年収1200万円」のわが家は“パワーカップル”と言えますか? 都心で子どもがいても、余裕がなく「普通の共働き」と感じてしまいます… (元記事) – https://news.yahoo.co.jp/articles/3d251ad918f8b7e2d02da457ca8d4ba33fe2b023
- 文部科学省の調査 (記事内で引用)