北海道の貴重な自然遺産である釧路湿原国立公園周辺で、大規模な太陽光発電所、いわゆるメガソーラーの建設計画が進行しています。この開発が、湿原の豊かな自然環境や希少な動植物の生態系に及ぼす影響について、SNSなどで懸念の声が強まっています。こうした状況に対し、自民党の細野豪志元環境相は21日、音声メディア「Voicy」を通じて、問題への向き合い方とその「処方箋」に関する自身の見解を示しました。
貴重な国立公園と開発の現実
細野氏はまず、釧路湿原を「タンチョウが飛び交い、自然が豊かで、観光の名所であり、貴重な野鳥の楽園」と高く評価しました。その上で、平坦な地形と北海道の中でも長い日照時間を理由に、発電コストの安さから国立公園周辺を含む広範囲にわたってソーラーパネルが設置されている現状を指摘しました。同氏は「開発を阻止したいと考えるが、日本では私有地の利用を一律に制限することが難しい」という、この問題の根本的な難しさを語っています。
自治体主導による開発検証の必要性
この複雑な状況に対し、細野氏は自身の過去の経験を引き合いに出しながら、解決策の一つとして地方自治体の積極的な役割を強調しました。かつて、自身の地元である静岡県の山間部で進められたメガソーラー開発を巡っては、県や国への強力な働きかけにより、停止させるまでに5年もの歳月を要したといいます。この経験を踏まえ、同氏は「自治体がしっかりと対処すべきだ」と強く訴えました。
具体的な対策として、開発手続きに法的な瑕疵がなかったかを徹底的に検証し、もし瑕疵が確認された場合には厳密な法運用を求め、その開発の是非を再検証できるような枠組みを構築することの重要性を強調しました。
環境問題に関する見解を述べる細野豪志元環境相
太陽光パネル廃棄物問題への警鐘
さらに、細野氏はメガソーラーが一度設置されると、長期的には大量のパネルが廃棄物となる問題にも言及しました。「使用済みのパネルが産業廃棄物として埋め立てられているのが現実だ」と述べ、この状況を改善するための新法制定の動きがあったものの、未だ実現に至っていない現状を憂慮しました。
自然環境とエネルギー調和への道
細野氏は、災害時における地域内発電が日々の暮らしを支えるなど、メガソーラーにもメリットがあることを認め、「私自身、ソーラーパネルについて必ずしも否定的に考えているわけではない」と理解を示しました。しかし、開発が進むことで「景観が激変し、湿原という貴重な場所が侵食される」といった環境問題が生じることへの懸念を改めて表明しました。
同氏は、やがて排出される大量の廃棄物には有害物質が含まれる可能性もあるため、「きちんと管理され、リサイクルされてはじめて、太陽光パネルが真に環境と整合性のある形になると考えている。これは極めて重要な視点だ」と述べ、持続可能な運用の必要性を強く訴えました。
現状について細野氏は、静岡での経験が開発前であったため阻止できたのに対し、釧路湿原周辺のケースは「阻止が正直、困難になってきている」としながらも、「まだ手立てはあるかもしれない」と希望を示しました。地元の自治体や経済界、さらには国会議員らとの連携を通じて、可能な対策を模索していく意向を表明し、地域全体での協力体制の重要性を締めくくりました。
細野豪志氏は、民主党政権下の野田佳彦内閣で環境相を務め、東日本大震災後の東京電力福島第一原発事故に伴う処理水問題など、多くの環境政策課題に対応してきた経験を持ちます。
参考資料:
釧路湿原メガソーラー強まる反対 冨永愛さんやつるの剛士さん…野口健さん呼びかけが反響
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