和平をめぐる協議が進行中であるにもかかわらず、ロシアはウクライナに対するドローン(無人機)攻撃を続けている。8月18〜19日の夜や20〜21日の夜にも、ウクライナ各地の目標に計数百機を送り込む大規模な攻撃を行った。使用しているドローンは自国製の「ゲラニ」や「ゲルベラ」といった機種で、模倣したイラン製ドローンの名前から「シャヘド」と呼ばれることが多い。
この3年ほどの間に、シャヘド型ドローンはウクライナにとって深刻な脅威になった。ロシアはこの自爆ドローンを用いて、ウクライナの都市やインフラ、防御陣地への攻撃を増やしている。ウクライナはシャヘドに対処するため防空システムやジャミング(電波妨害)装置に多大な資金や労力を注いできたが、こうした従来の対抗手段は効果が低下してきている。そこで、シャヘドの生産や配備にかかわる施設に対する攻撃の強化を戦略に加えている。
■シャヘド供給網の結節点を狙う
ウクライナが最近遂行したドローン作戦としては、ロシア軍機を多数破壊した6月の「クモの巣作戦」が大きな注目を浴びたが、これはウクライナがロシア領内深くで数多く行っている攻撃のひとつにすぎない。長距離ドローン能力を向上させているウクライナはこの夏も、ロシア各地の製油所やその他の重要インフラに対する攻撃を重ねている。より重要な点は、シャヘドの生産や保管、配備に関係する施設への攻撃に重点を置いていることである。
ウクライナは早くも2024年初夏にはシャヘドの関連施設を攻撃している。同年6月と7月、ロシアの占領下にあるウクライナ南部クリミアとロシア南部クラスノダール地方にあるシャヘドの保管施設や発射場を攻撃し、限定的な損害を与えた(編集注:これに先立つ同年4月、ウクライナはロシア中部タタールスタン共和国エラブガにあるシャヘドの組み立て工場をドローンで攻撃している。この工場はこれまでに繰り返し攻撃を受けている)。
地上のドローンは飛行中のドローンよりも攻撃しやすいが、その施設は分散し、防護も施されているため、全体として攻撃による効果は限られる。ウクライナは2024年から2025年にかけてシャヘド関連施設に対する攻撃を続けてきたが、ここへきて攻撃を激化させており、多くの場合、複数のドローンを用いて保管施設などを破壊している。