25日、ホワイトハウスで行われたトランプ米大統領と李在明(イ・ジェミョン)大統領による米韓首脳会談は、ワシントン・ポスト紙が「世界舞台にデビューした李大統領が就任3カ月で最も注目された席」と評するなど、終始和やかな雰囲気で進行しました。トランプ大統領は李大統領を「あなたは戦士。米国は完全な支援を送る」と称賛し、普段は批判的なメディアからも肯定的な評価が聞かれました。しかし、この和やかな会談の中でトランプ大統領が発した冗談混じりの言葉の中には、韓米関係および地域の安全保障に大きな影響を与えかねない、深く考察すべき問題が潜んでいます。
ホワイトハウスでの米韓首脳会談中、笑顔を交わすトランプ大統領と李在明大統領。両国の主要議題が議論された場面。
突出した新たな要求:在韓米軍基地の土地譲渡問題
トランプ大統領は、在韓米軍縮小の可能性に関する質問に対しては明確な回答を避けつつも、「われわれが持っている大きな基地の土地所有権を譲れと要請すること」と、新たな要求を提示しました。これは、これまで韓国を「マネーマシン」と呼び、防衛費分担金の大幅引き上げを求めてきたトランプ氏の姿勢から一歩踏み込んだもので、土地の所有権そのものを譲渡するよう求める発言は今回が初めてです。
現在、韓米間の合意では、米軍基地の敷地は韓国が返還を前提として米国に貸与するという形で明確に定められています。憲法に規定された領土の一部を外国に事実上譲渡することは、大きな批判に直面する可能性があり、もしこの要求が推進されるとすれば、国会での批准手続きなどを経て、両国が締結している韓米駐留軍地位協定(SOFA)を全面改正する必要が生じます。
また、仮に朝鮮半島に米軍が土地を所有する基地が建設された場合、2016年に慶尚北道星州(ソンジュ)に高高度防衛ミサイル(THAAD)システムが配備された時とは比較にならないほど、中国が強く反発する可能性が指摘されています。李大統領は、トランプ大統領のこの発言に対し、会談中には具体的な対応を示しませんでした。この要求がトランプ大統領による突発的なものだったのか、あるいは事前に双方で最低限の協議が行われていたのかは現時点では不明です。
北朝鮮アプローチ:非核化目標と「ピースメーカー」論
一方、トランプ大統領はこの会談で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と「年内に会いたい」と述べ、北朝鮮との対話再開への意欲を明確にしました。特に「非核化はとても大きな目標。ロシアは非核化をしようとし、中国もしようとするものと考える。核兵器が拡散するように放っておくことはできない」と発言。これは、これまで朝米会談再開に対する懸念(非核化ではなく、北朝鮮を核保有国と前提とした軍縮交渉に進む可能性)をある程度払拭するもので、ロシアや中国との核軍縮協調を強調する姿勢を示しました。
李大統領はトランプ大統領の発言に対し、「私の関与で南北関係がうまく改善されるのは容易でないが、実際にこの問題を解決ができる唯一の人物はトランプ大統領。大統領が『ピースメーカー』をするならば私は『ペースメーカー』として懸命にサポートする」と応じ、トランプ大統領による朝鮮半島非核化プロセスへの支持と協力姿勢を表明しました。
結論
今回の米韓首脳会談は、一見和やかに進められたものの、トランプ大統領による在韓米軍基地の土地譲渡要求という新たな問題が浮上し、今後の韓米関係における防衛費分担問題の複雑さを一層深めることとなりました。同時に、北朝鮮に対するトランプ大統領の対話再開への意欲と、非核化を最終目標とする明確な姿勢は、朝鮮半島情勢の安定化に向けた期待も残しています。李在明大統領の「ペースメーカー」としての役割表明は、米国の主導的な外交を支援しつつ、韓国としての貢献を示唆するものですが、これらの発言が具体的な政策としてどのように展開され、東アジアの地政学にどのような波紋を広げるのか、今後の動向が注目されます。
参考文献
- Yahoo!ニュース. 「トランプ大統領、李在明氏に「在韓米軍の土地譲れ」…北朝鮮には「年内に会いたい」」. https://news.yahoo.co.jp/articles/715ef8d6e3dc0b0caf5ddc968468176f0c660129 (参照日: 2025年8月26日)