神戸市のマンションで発生した片山恵さん(24)刺殺事件は、社会に大きな衝撃を与えています。この事件で逮捕された谷本将志容疑者(35)は、被害者との面識を否定しており、過去にも見知らぬ女性への一方的な好意からストーカー行為に及び、逮捕・起訴された経緯があります。この「異常な思考」は一体どこから芽生え、なぜ再び尊い命が奪われる事態に至ったのでしょうか。私たちは、谷本容疑者の知られざる過去と、その心の闇に深く迫ります。
神戸マンション刺殺事件の谷本将志容疑者(35)。彼の地元取材で明らかになった暗い過去と異常な思考の根源を伝える写真。
谷本容疑者の知られざる生い立ちと不登校の過去
公判記録などによると、谷本将志容疑者は1989年9月、大阪市で生まれました。小学校2~3年の頃に転校してきたと語る同級生もいますが、彼は幼少期の一部を大阪府下の別の市で過ごし、両親の離婚後は父親と暮らす期間が長かったようです。
谷本容疑者と同じ小中学校に通っていた男性は、彼の学童期について次のように語っています。「理由は分かりませんが、彼は小学4年生の頃から不登校気味でした。いつの間にか学校に来なくなり、中学2年生くらいにはほとんど姿を見かけなくなりましたね。小学校の時は、放課後によく友達と宿題やプリントを届けに行ったものです。普段はおとなしい印象でしたが、一緒に遊ぶ時はニコニコして穏やかな少年でした。ただ、成績はかなり悪い方だったと記憶しています。」他の同級生からも「印象が薄い」という声が多く聞かれ、彼が社会的に孤立していた可能性が示唆されます。
歪んだ思考とミリタリー趣味の関連性
そんな谷本容疑者には、周囲の男子と同じようにテレビゲームを好む一方で、特に「エアガン」や「ミリタリー系」に傾倒するという特徴的な趣味がありました。彼はハンドガンなどを何丁も収集し、それを友人に見せて自慢することもあったといいます。
ある時、友人が近所の公園で谷本容疑者が一人でエアガンを乱射しているのを目撃しました。「学校をサボって一体何をやっているのだろう」と、幼心に不思議に思ったと振り返る友人は、当時は「変わった奴だな」と感じる程度だったものの、「まさか人を殺すとは……」と語り、深い衝撃を受けています。この偏った趣味が、後の「異常な思考」と何らかの形で関連していたのか、あるいは孤立した内面世界を形成する一因となったのか、その連関は不明です。
執行猶予中の再犯が示す深刻な問題
谷本容疑者が今回のような凶悪事件を起こす以前にも、その「異常な思考」は明確に表れていました。在阪の大手紙社会部記者の話によれば、2022年に起こした別の女性に対するストーカー事件の公判で、神戸地裁の安西二郎裁判長は次のように述べています。「住居侵入・傷害事件の翌日に、謝って許してもらいたいと考えて、被害者の心情に思いを致すことなく、被害者方へと赴こうとした経緯からしても、思考の歪みは顕著である。再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」。
谷本容疑者はこの事件で、犯行を認めて反省の態度も見せたことから、懲役2年6か月、執行猶予5年の判決を受けました。その後、彼は地元を離れ関東へ移住し、逮捕時はドライバーとして真面目に働いていたとされますが、執行猶予期間が明けるまでにまだ2年を残していました。そして、裁判長が危惧した通り、谷本容疑者は「反省」を深めることなく、再び見知らぬ女性に一方的な好意を寄せ、ついには片山恵さんの尊い命を奪うという最悪の結果を招いてしまったのです。
亡くなった片山さんの周囲からは、悲しみと戸惑いの声が絶えません。彼女が大手損害保険会社に勤務し、中古車ディーラーの男性を担当していたことが明かされていますが、被害者の無念は計り知れません。谷本容疑者の過去と「異常な思考」の連鎖は、社会全体が向き合うべき深刻な課題を浮き彫りにしています。