高齢者の資産運用:オルカンと「世界のベスト」選択の議論と注意点

昨今、SNS上で高齢者の資産運用に関する活発な議論が交わされています。特に注目を集めたのは、「親がインベスコ世界のベストを購入していたため、オルカン(全世界株式インデックスファンド)へ乗り換えた」という内容の投稿です。この投稿をきっかけに、「長期投資する時間がない高齢者にとって、インデックスファンドは不向きではないか」という意見が多くの反響を呼びました。インデックスファンドは、長期にわたる運用期間を通じて初めてその投資成果が期待できるため、高齢になってから始めた場合、十分な期間を確保できず、オルカンのような商品のメリットを享受しにくいという見解が中心です。

インデックス投資は高齢者に不向きなのか?多様な意見が交錯

投信投資家の間では、このテーマについて様々な反応が見られます。その代表的なものとして、「取り崩し期にある高齢者には毎月分配型の方が適している」という意見があります。近年、資産運用の「出口戦略」への関心が高まっており、資産を増やすことばかりに注目するのではなく、70代、80代に入ってもひたすら増やす目的で運用を続けるのは果たして適切なのか、という視点です。「日本人は亡くなる時に最もお金持ち」という皮肉な意見もあるように、自身の人生を豊かにするための資産運用が、生涯で最も資産を持つのが死に際であるというのは、本質的に矛盾しています。むしろ、運用益を得つつ徐々に資産を取り崩していく方が、理にかなっているという考え方も存在します。

高齢者の投資信託、オルカンや世界のベストを比較検討する様子高齢者の投資信託、オルカンや世界のベストを比較検討する様子

インデックスファンドへの批判とリスク理解

このような議論の中で、オルカンやS&P500といった人気のインデックスファンドに対する批判的な声も予想以上に多く見受けられます。「インデックスは最悪、資産が半値になることも覚悟すべきだ」「高齢者にインデックスを勧めるのは理解できない」といった意見がその例です。もちろん、人気のある商品には批判がつきものですが、市場が大きく荒れた局面では、市場全体の動きに連動するインデックス運用が、特定の戦略でα(超過リターン)を狙うアクティブ運用に劣後するケースも実際にあります。インデックス運用が常に低リスクであるとは言い切れません。

また、資産運用の世界では「インデックス運用は長期的に見ればアクティブ運用を上回る」という定説が確立されています。しかし、70歳からの資産運用において、この長期的な視点がどこまで適用できるのかという疑問が生じるのも当然です。日本人の健康寿命を考慮すると、長期投資に十分な時間的な余裕がどれだけ残されているのかという現実的な側面も無視できません。

70歳からの資産運用におけるリスク管理の重要性

結論として、70歳を過ぎたら、過度なリスクを取って資産運用を続けること自体を再考するべきでしょう。人生のゴールが目前に迫る中で、リーマンショック級の市場暴落に直面し、老後の生活資金が半減してしまったとすれば、その後の人生は非常に苦しいものになります。この観点から見れば、オルカンであろうと、インベスコ世界のベストであろうと、これらのリスク資産への投資比率自体を適切に下げることが賢明です。

もちろん、認知機能の維持を目的として、個別銘柄投資を行うことは悪いことではありません。しかし、その場合でも、保有銘柄の株価が大きく下落しても実生活に悪影響を及ぼさない程度の資産に限定することが大前提となります。高齢期の資産運用においては、増やすことよりも「守ること」、そして「賢く取り崩すこと」に焦点を当てるべきであり、自身のライフプランに合わせたリスク許容度の見直しが不可欠です。

参考文献:
Yahoo!ニュース – 高齢者の場合、持つべきは「世界のベスト」なのか「オルカン」なのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/0f4af16c4474353b05aacde6f5bde1df831e2582