今年5月に続き、7月中旬にも心臓の治療のために入院された上皇陛下(91歳)。その傍らには常に、上皇后美智子さま(90歳)の献身的なお姿がありました。数々の公務と人生の困難を乗り越えてこられた美智子さま。その心の支えとなってきたものの一つが音楽、特にピアノです。かつて美智子さまは、親しい音楽仲間にこう漏らされたと言います。「私にはピアノがあったから――」。この言葉は、上皇后さまの人生において音楽がいかに重要な役割を果たしてきたかを物語っています。
幼い頃からピアノに親しみ、その音色を心の支えとしてきた上皇后美智子さま
40年来の音楽仲間が語る上皇后美智子さまの音色
「美智子さまのピアノの音色は本当に美しく、聴く人の心を深く打つんです」。そう語るのは、世界的バイオリニストの大谷康子氏です。大谷氏は、モスクワ・フィルやN響など国内外の著名なオーケストラと多数共演し、BSテレ東でレギュラーの音楽番組を持つなど、多岐にわたり活躍されています。彼女は40年以上にわたり、音楽を通じて上皇后美智子さまと親睦を深めてきました。
出会いは大谷氏がまだ20代の大学院生だった頃。「浩宮さま(現在の天皇陛下)のビオラのお相手として御所にお呼ばれした際、美智子さまにお会いしました」と当時を振り返ります。最初は音楽室に軽食を運ばれるだけだった美智子さまですが、ある日「私もいいかしら」とピアノの前に腰かけられたそうです。その見事な腕前に大谷氏は深く驚き、瞬く間に美智子さまが奏でる音色の虜となっていきました。「バッハの『G線上のアリア』を2人で演奏したことがありますが、本当に流暢で、ただテクニックだけで弾くのではありません。美智子さまのピアノには、音符と音符の間に大切な音楽があり、それが心の奥底に響くのです」と大谷氏はその魅力を表現します。
世界的ピアニストとの共通点、そして心の拠り所へ
大谷氏によれば、美智子さまの音色は、今年1月に70歳で逝去された世界的ピアニスト、藤井一興さんの演奏を想起させるものがあると言います。「月が照らす湖面がキラキラと輝いているような音を出せる方でした。美智子さまは『藤井さんのような音が出したいのよ』と仰っておられましたが、ご自身も同じ傾向の、心に残る美しい音を奏でていらっしゃいます」。
上皇陛下のご退位前は、毎年8月に群馬県の草津で開催される国際音楽祭のワークショップでピアノを演奏されるのが恒例でした。その直前まで、静養先の軽井沢でピアノの特訓に励まれ、大谷氏もたびたび練習にお供をしたそうです。
そんな中で美智子さまが漏らされたのが、冒頭で触れた「私にはピアノがあったから――」という言葉でした。大谷氏はこの言葉の背景を推し量ります。「ピアノがお好きなのは勿論ですが、きっと様々な困難がおありになる中で、音楽が上皇后さまにとってかけがえのない心の拠り所でいらしたのではないでしょうか」。
上皇后美智子さまの人生において、ピアノが単なる趣味ではなく、数々の公務や人生の試練を乗り越えるための重要な心の支えであったことが、音楽仲間である大谷康子氏の言葉から深く伝わってきます。その美しい音色は、技術だけでなく、音符の間に込められた美智子さまの深い感性や人間性を映し出していると言えるでしょう。音楽がもたらす癒しと力は、上皇后さまの揺るぎない精神を支え、多くの人々に感動を与え続けています。
参考文献
- Source: Yahoo!ニュース (2025年8月29日). 美智子さま「私にはピアノがあったから」40年来の音楽仲間が“音色”を明かす. https://news.yahoo.co.jp/articles/f1aaee744ac0cb4bf0cd28bf6ffde5efebad3dd3