習近平主席、SCO会議で「多国間主義」擁護:新興国の求心力強化へ

中国の天津市で31日、習近平国家主席が主宰する上海協力機構(SCO)首脳会議が開幕しました。高関税政策を掲げるトランプ米政権への反発が新興国・途上国の間で広がる中、習主席は「多国間主義」の擁護を掲げ、新興国・途上国における求心力の強化を目指しています。

SCO首脳会議の概要と主要参加国

首脳会議は9月1日まで開催され、中国、ロシア、カザフスタンなど加盟10カ国の首脳に加え、対話パートナー国のカンボジアのフン・マネット首相らが出席しました。ロシアのプーチン大統領も31日に天津入りし、会議の重要性を際立たせています。
習近平主席とプーチン大統領、SCO首脳会議の開会式で手を振る習近平主席とプーチン大統領、SCO首脳会議の開会式で手を振る

中印関係改善への動き:習主席とモディ首相の会談

習主席は31日、SCO首脳会議出席のため訪中したインドのモディ首相と会談。中国外務省によると、習主席は「双方は両国関係の持続的な健全で安定した発展を促進すべきだ」と発言し、国境問題を巡って冷却化していた中印関係の改善を呼びかけました。モディ首相も「中国側と公平かつ合理的で、双方が受け入れ可能な国境問題の解決案を探すことを望む」と述べ、関係改善に前向きな姿勢を示しました。
習近平主席とモディ首相、天津での首脳会談で握手を交わす習近平主席とモディ首相、天津での首脳会談で握手を交わす

「真の多国間主義」を強調する中国

習主席はSCO首脳会議に先立つ8月30日、国連のグテレス事務総長とも会談し、中国の国際的な立場を明確にしました。その中で習主席は「中国は常に歴史の正しい側に立ち、真の多国間主義を堅持する」と強調。これは、一方的な政策を進める国々への牽制と、国際協調の重要性を訴えるメッセージとして受け止められています。

歴史的会談へ:抗日戦勝記念行事での三巨頭集結

9月3日には北京市で抗日戦勝80年の記念行事として軍事パレードなどが行われ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記も出席予定です。これにより、習主席、プーチン大統領、金総書記の三者が初めて一堂に会する歴史的な機会となる可能性があり、その動向に国際社会の関心が集まっています。
習近平主席、プーチン大統領、金正恩総書記が並ぶ姿のイメージ習近平主席、プーチン大統領、金正恩総書記が並ぶ姿のイメージ

インドネシアの参加見送り背景

一方、香港メディアは8月31日、SCO首脳会議に出席予定だったインドネシアのプラボウォ大統領が、国内で広がる反政府デモへの対応を理由に訪中を取りやめたと報じました。

今回のSCO首脳会議は、米国主導の国際秩序に対抗し、中国が多国間主義を旗印に求心力を高めようとする重要な場となりました。中印関係の進展や、北朝鮮との歴史的会談の可能性など、アジア太平洋地域の地政学的な動向に大きな影響を与えています。これらの動きは、国際情勢の多極化を加速させ、日本外交にとっても注視すべき展開となるでしょう。

上海協力機構(SCO)とは

上海協力機構(SCO)は2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国で設立された多国間協力枠組みです。現在、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシを含む10カ国が加盟し、対話パートナー国も多数存在します。テロ対策だけでなく、安全保障、経済、文化など広範な分野で連携を図り、事務局は北京に置かれています。