SNSなどで拡散されるデマや誤情報を検証する「ファクトチェック」団体は、現代の情報社会においてその存在が大いに歓迎されるべきです。しかし、その中でも「日本ファクトチェックセンター(JFC)」の活動は、ソーシャルネットワーキングサービス上で頻繁に批判の対象となり、炎上状態を引き起こしているように見受けられます。元NHK党議員・浜田聡事務所の公設秘書を4年半務め、現在はライターとして活動する村上ゆかり氏は、JFCが直面する信頼性の問題とその背景にある要因について深く掘り下げ、問題提起しています。
日本ファクトチェックセンター(JFC)とは?その役割と目的
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)によって2022年10月1日に設立された偽情報対策機関です。総務省が2020年2月に公表した研究会報告書において、偽情報対策として民間による取り組みの推進が提言されており、JFCの設立はこの提言に沿う動きと言えます。インターネット上の偽情報や誤情報の流通を防ぎ、利用者の情報リテラシー向上を目指すその活動は、一見すると社会の健全な情報空間の維持に貢献する有益な取り組みであるとされています。
なぜJFCのファクトチェックは「炎上」するのか?主な批判点
JFCが公表するファクトチェック記事が頻繁に批判の対象となり、「炎上」状態を引き起こす背景には、複数の理由が存在します。その中でも特に大きな要因として挙げられるのは、「検証対象の選定に対する偏りへの疑念」です。一部の利用者からは、JFCが特定の政治的主張や団体を標的にしているのではないかという印象を持たれています。
また、検証のプロセスや判定基準が恣意的であるという不満も大きく、検証が不十分であったり、重要な論点が意図的に無視されているように見えたりする場合もあるとの指摘があります。結果として、ファクトチェックが中立的な事実検証ではなく、特定の立場を擁護したり攻撃したりするための道具として機能していると受け止められることがあります。
インターネット上の誤情報が拡散する様子と、ファクトチェックによって事実が検証されるイメージ
具体的事例から見るJFCの「ファクトチェック」への疑問:自民党員資格を巡る言説
JFCのファクトチェックに対する疑問を具体的に示す事例の一つとして、自民党の党員資格に関する言説を扱った検証が挙げられます。JFCは2024年9月20日に公開された「外国人でも実在しなくても自民党員になれる? 国籍や紹介者などの条件がある【ファクトチェック】」という記事でこの問題について検証を行いました。
記事では、「自民党員には外国人でも4000円納めれば簡単になれる」「党員の国籍は調べていない」「実在しなくても(死者でも)投票用紙が届く」といったSNSで拡散された言説を検証対象としました。検証過程では、自民党のウェブサイトに記載されている党員資格を紹介し、その資格が「満18歳以上で日本国籍を有する方」などの条件を定めていることを示しました。この事例は、JFCの検証方法や対象選定が、一部で批判される要因となっている現状を浮き彫りにしています。
JFCの活動は情報空間の健全化に貢献する一方で、その検証方法や対象選定の透明性・公平性に関して、厳しい目が向けられているのが現状です。真に社会に貢献し、信頼を維持するためには、これらの批判に真摯に向き合い、透明性の高い運用と客観的な基準の明確化が不可欠であると言えるでしょう。
参考文献