ドナルド・トランプ米大統領が掲げる経済と安全保障の主要公約が、同時期に深刻な課題に直面している。先月29日には控訴裁判所が「相互関税は違憲」との判決を下し、一方、長引く戦争の終結に期待が寄せられたロシアとウクライナの首脳会談は不発に終わる可能性が高まった。このような状況下、トランプ大統領は先月末から公の場に姿を見せず、ホワイトハウスは異例の「大統領の予定なし」を連日公示。この公務不在期間中、トランプ大統領はSNSを通じて関税判決への強い不満と見解を表明し、国内外で大きな波紋を呼んでいる。
ゴルフ場からホワイトハウスへ向かう途中、携帯電話を確認するトランプ米大統領(バージニア州)
4日連続の「スケジュールなし」:ゴルフ場での秘書室長との密会説
ホワイトハウスが公示した1日のトランプ大統領のスケジュールは「なし」だった。先月29日からの4日間にわたり、公的な予定は一切組まれていなかった。先月27日もマイク・ペンス副大統領との非公開昼食のみで、28日には情報機関からの報告と大統領令署名式があったものの、いずれも非公開で行われた。この6日連続に及ぶ異例の公務不在を受け、交流サイト(SNS)上では「#トランプはどこへ」「#トランプ死亡」といったハッシュタグが拡散し、大統領の動向に対する憶測が飛び交った。
しかし、トランプ大統領はワシントンに近いバージニア州にある自身のゴルフ場、「トランプ・ナショナル・ゴルフ場」で目撃されていた。先月30日には孫たちと共にゴルフ場にいる姿が撮影され、31日には元アメリカンフットボール選手のジョン・グルーデン氏とゴルフをする写真を自身のSNSに投稿した。ところが、ホワイトハウス記者団の報告によると、31日午後4時頃にトランプ大統領がゴルフ場を出る前に、ワイルズ大統領秘書室長がクラブハウスの外に姿を見せ、先に車でゴルフ場を後にしたという。この状況は、公務がないとされている休日にも関わらず、ゴルフ場で緊急の報告や重要な協議が行われた可能性を示唆している。
「関税廃止なら15兆ドルの投資は取り消し」:トランプ氏、SNSで判決を強く批判
トランプ大統領は31日、自身のSNSに、まるで何かを深く思案しているかのような投稿を連投した。午前11時49分にゴルフの写真を投稿した後、午後2時1分には「もし関税、そして我々がすでに集めた数兆ドルがなかったとすれば、米国は完全に破壊され、軍事力はすぐに消滅しただろう」と記し、関税制度が国家の経済と安全保障にいかに不可欠であるかを強調した。さらに、控訴裁判所の判決に対して「急進左派判事集団は7対4の意見で意に介さなかったが、オバマが任命した一人の民主党員は我が国を救うために投票した」と付け加え、判決を下した判事を厳しく批判するとともに、自身を支持した判事への言及を行った。
この日のトランプ大統領のゴルフ場到着が午前10時、関税関連の投稿が午後2時、そしてワイルズ秘書室長がゴルフ場を離れたのが午後4時頃であるという時間軸を考慮すると、トランプ大統領がゴルフ場に急行したワイルズ秘書室長と、相互関税違憲判決に関連した協議を行った可能性が高いと推測される。実際にトランプ大統領は、ホワイトハウスに戻ったこの日午後8時42分に再度SNSを更新し、「15兆ドル以上が米国に投資されるだろう。この投資の大部分は関税によるもので、急進左派裁判所が関税を廃止させれば、この投資だけでなくそれ以上の投資が即座に取り消されるだろう」と投稿。この発言は、判決が覆されなければ米国への大規模な投資が失われるとの警告であり、自身の経済政策への強い固執と、司法への不満を改めて示すものとなった。
トランプ大統領が直面する経済・安全保障上の課題と、それに伴う異例の公務不在は、米国内外の注目を集めている。特に、関税を巡る司法判断への強い反発と、SNSを通じた積極的な意見表明は、トランプ政権の政策運営と今後の動向を占う上で重要な要素となるだろう。これらの出来事は、次期大統領選を控える米国政治に、さらなる不確実性をもたらす可能性も秘めている。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/741d067a257ea8ee34b78d7ffd80ddb63f331300