頻発する群発地震:日本の現在地と高まる災害リスクへの備え

近年、日本各地で不穏な地震活動が相次ぎ、多くの人々が「大規模な災害の前触れではないか」という不安を抱いています。特に注目されるのは、特定の地域で短期間に集中して発生する「群発地震」です。現在の日本における地震のリスクはどうなっているのか、そして私たちはどのように備えるべきか。最新のデータと現地取材に基づき、その「現在地」を探ります。

2024年能登半島地震の被害状況。輪島市で最大震度7を観測し、広範囲で火災と家屋の倒壊が発生した様子2024年能登半島地震の被害状況。輪島市で最大震度7を観測し、広範囲で火災と家屋の倒壊が発生した様子

トカラ列島を襲う2,000回超の群発地震

2024年1月には能登半島地震が最大震度7を観測し、甚大な被害をもたらしましたが、それ以降も日本列島では地震が頻発しています。その中でも、2025年6月21日から鹿児島県十島村のトカラ列島近海で続いた群発地震は、日本中が固唾をのんで見守る事態となりました。気象庁の震度データベースによると、8月24日までに震度1以上の揺れが2293回も発生しています。

十島村は、屋久島と奄美大島の間に点在する12の島々から成り、そのうち7島に人々が暮らしています。7月末時点の人口はわずか664人。火山島やサンゴ礁の島、温泉の島など、それぞれに独自の自然と魅力を持ち、手付かずの景観が残されています。このような小さな離島で起きた大規模な群発地震は、人々に地震活動の活発化を強く意識させる出来事となりました。

島民が語る「慣れ」と「現実」:悪石島の震度6弱

この群発地震の期間中、島内では防災無線が頻繁に鳴り響き、緊急事態が続いていることを常に知らせていました。十島村議会議員の埜口裕之さん(48)は、当時の状況について「震度4以上の地震があれば夜中でも島内放送が流れ、役場の公式LINEや防災メールにも情報が絶えず入ってくるため、頭のどこかにいつも地震のことがありました」と語ります。

茨城県出身の埜口さんは、8年前に島の魅力に惹かれて十島村に移住し、村内で最も人口の多い中之島で島バナナなどを生産しています。十島村では過去にも度々群発地震が発生していましたが、今回は特にその規模が大きく、住民の間に緊張が走りました。特に被害が大きかった悪石島では、7月3日に震度6弱を観測し、その後も震度5強が3回、震度5弱が3回、震度4が44回発生しました。

埜口さんは当初の島民の反応を、「過去の経験から2週間ほどで収まるだろうという慣れがあり、震度5強や6弱の地震が起こるまでは、『注意はしているものの深刻には捉えていなかった』」と説明します。しかし、度重なる強い揺れは、島民の意識をより現実的なものへと変えていきました。

結論:高まる地震リスクへの継続的な備え

トカラ列島で発生した2,000回を超える群発地震は、日本列島が常に地震のリスクに晒されている現状を改めて浮き彫りにしました。能登半島地震の記憶が新しい中で、こうした地震活動の活発化は、決して他人事ではありません。

群発地震に対する「慣れ」は時に危険を伴いますが、今回のトカラ列島の事例は、いかに冷静に状況を把握し、適切な防災行動に繋げることが重要かを示唆しています。日本に住む私たち一人ひとりが、防災意識を常に持ち、緊急時の避難経路の確認や備蓄品の準備など、日頃からの備えを継続していくことが不可欠です。


参考文献:

  • AERA 2025年9月8日号
  • Yahoo!ニュース
  • 気象庁 震度データベース