米国テキサス州ヒューストンで、若者の間で流行する「ディンドン・ディッチ」、いわゆる「ピンポンダッシュ」のいたずらが悲劇的な結果を招きました。11歳の少年がこの遊びの最中に銃撃され、死亡するという痛ましい事件が発生したのです。この事件は、無邪気に見えるいたずらが、銃社会である米国においていかに危険な行為となり得るか、またソーシャルメディアで拡散される安易なチャレンジがもたらす深刻な影響を浮き彫りにしています。
ヒューストンでの悲劇:11歳少年の命を奪ったいたずら
1日(現地時間)、CNNなどの報道によると、ヒューストン東部地域の住宅街で、玄関の呼び鈴を押して逃げる「ディンドン・ディッチ」のいたずらをしていた11歳の少年が、銃で撃たれ、前日の8月31日に病院で死亡したと現地警察が発表しました。少年は8月30日深夜、友人たちとともにこの遊びに興じており、午後11時頃、ある家で呼び鈴を押して逃走中に背中を銃で撃たれたとのことです。病院に搬送されたものの、翌日に息を引き取りました。この事件で、少年以外に他の負傷者が出たとの確認はされていません。警察は、目撃者の証言として「子どもたちが玄関の呼び鈴を押した家から誰かが出てきて、逃げる子どもたちに銃を撃った」と伝えています。
住宅の玄関ドアと呼び鈴、ピンポンダッシュ事件現場のイメージ
「ディンドン・ディッチ」とは?ソーシャルメディアでの拡散とその危険性
米国では、玄関の呼び鈴を押してドアが開く前に逃げるいたずらを「ディンドン・ディッチ(ding dong ditch)」と呼びます。この行為は、近年TikTok(ティック・トック)などのソーシャルメディア上で人気の「チャレンジ」として広まっており、玄関のドアを叩いたり蹴ったりするような過激な変形版のディンドン・ディッチ・チャレンジ動画も繰り返し投稿されています。若者たちの間で手軽な娯楽として認識されがちなこの「いたずら」は、特に米国のような銃社会では、家主の不意の反応や自己防衛行動と結びつき、予期せぬ重大な結果を招く可能性があります。住宅へのいたずらを不法侵入や脅威と見なす住民も少なくなく、今回の銃撃事件はその危険性を改めて浮き彫りにしました。
相次ぐ類似事件と法的警告
「ディンドン・ディッチ」のいたずらに関連する死亡事件は、今回が初めてではありません。今年5月にはバージニア州で、ディンドン・ディッチの動画を撮影していた18歳の高校生が家主の銃に撃たれて死亡する事件が発生しました。また、2023年にはカリフォルニア州で、玄関の呼び鈴を押して逃げた10代の少年3人を車ではね殺した男性が有罪判決を受けるという痛ましい事故も起きています。
これを受けて、各地の法執行機関は厳しい警告を発しています。インディアナ州ハミルトン郡保安官事務所は8月、フェイスブックを通じて「ドアを叩いて逃げるのが楽しいと思うか。もう一度考えてみなさい」と呼びかけ、「いたずらのように見える行動が、深刻な法的問題、財産被害、さらには誰かが傷つく最悪の事態につながる可能性がある」と警告しました。さらに、フロリダ州ボル―シャ郡保安官事務所のマイク・チットウッド保安官は7月、ある家のドアを蹴って逃げた13歳の少女と15歳の少年を逮捕した後、「これは、特にフロリダでは、死ぬのに申し分のない方法だ」と述べ、「TikTokチャレンジがあなたの未来を危険にさらしている」と強く訴え、ソーシャルメディア上のチャレンジが若者の命を危険に晒すことへの警鐘を鳴らしています。
まとめ
ヒューストンでの11歳少年の死亡事件は、「ピンポンダッシュ」や「ディンドン・ディッチ」といったいたずらの危険性を再認識させるものです。特に米国における銃社会の現実、そしてソーシャルメディアで安易に拡散される「チャレンジ」文化が、若者の命を脅かす深刻な社会問題となっていることが浮き彫りになりました。これらの事件は、単なるいたずらが法的な問題だけでなく、人の命に関わる悲劇につながりかねないことを強く示唆しています。若者たちには、オンラインの流行に流されることなく、自身の行動がもたらす可能性のある深刻な結果について深く考えることが求められます。また、保護者や教育機関も、こうしたデジタル社会の新たな危険性について、適切な情報提供と注意喚起を行う責任があります。
参考文献
- CNN
- 現地警察発表
- インディアナ州ハミルトン郡保安官事務所
- フロリダ州ボル―シャ郡保安官事務所