おとぼけビ~バ~が投げかける「知識誇示」世代間ギャップ:SNS時代の共感と反発

2020年2月14日に配信された、京都出身の女性4人組バンド「おとぼけビ~バ~」のシングル「ジジイ is waiting for my reaction(ジジイは私の反応を待っている)」は、現代社会におけるある種の世代間ギャップとコミュニケーションの課題を鮮やかに描き出しました。縦型動画フォーマットを採用したTikTok風のミュージックビデオ(MV)は、発表と同時に日本語版と英語版の両方で公開され、若年層を中心に大きな反響を呼んでいます。この楽曲は、いわゆる「マンスプレイニング」(男性が女性に対し、上から目線で知識をひけらかす行為)に代表される、年長者による一方的な知識誇示の問題に、音楽という形で鋭く切り込んでいます。

「勘違いジジイ」への痛快な共感:SNS時代の直接的な反応

MVでは、「音楽に詳しい年配男性」が、自身が長年培ってきた知識を盾に、若い女性を口説けるという誤った認識を持っている様子が描かれています。彼はSNSのダイレクトメッセージを通じて執拗にアプローチを続け、その姿はまさに「勘違いジジイ」と呼ぶにふさわしい典型的な行動パターンを示しています。この「上から目線」の知識誇示に対し、YouTubeのMVコメント欄には、主に若い世代の視聴者から共感と溜飲を下げる声が殺到しました。

コメントには「20代女です。まじですっきりした!!!最高!!!!」「さいこうすぎて DM送り続けてくるジジイ全員にこのリンク送りたい」「ジジイの心をもっと抉(えぐ)って欲しい」「聴いててめちゃくちゃ溜飲が下がりました最高すぎ」といった内容が並び、この楽曲が若い世代の抱えるフラストレーションを見事に代弁し、痛快なカタルシスを提供したことが伺えます。

世界が認めるおとぼけビ~バ~と「知識マウント」の共通構造

世界的に評価される女性パンクバンド「おとぼけビ~バ~」の公式サイト画面世界的に評価される女性パンクバンド「おとぼけビ~バ~」の公式サイト画面

2009年に京都で結成されたおとぼけビ~バ~は、立命館大学の音楽サークル出身の女性4人組バンドです。結成初期から学外でのライブ活動を展開し、2016年には英国のインディレーベル「Damnably」と契約。SXSW、コーチェラ、グラストンベリーといった世界有数の音楽フェスに出演し、北米ツアーやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーサポートも経験するなど、その活動は国内外で高く評価されています。高速ギターリフとコーラスを特徴とする独特のサウンドは、デイヴ・グロール、トム・モレロ、メタリカのラーズ・ウルリッヒといった著名ミュージシャンからも支持され、米国の音楽メディア「Pitchfork」でのレビュー掲載や「ペースト」誌のベスト・パンク・アルバム選出など、特に海外での高い評価を獲得しています。

さて、「ジジイ is waiting for my reaction」のMVに登場する「勘違いジジイ」の行動は音楽趣味の世界を舞台にしていましたが、その「知識マウント」の構造は「自動車趣味」の世界にも共通して見られる現象です。長年の知識や経験を持つベテラン層が、それを盾に若者に対して優位に立とうとする傾向は少なくありません。

現代の自動車イメージ現代の自動車イメージ

例えば、若者が自身の愛車をSNSに投稿するやいなや、「昔の○○はもっと良かった」「そのグレードは大したことない」「チューニングの意味をわかってない」といった、一方的で批判的なコメントが寄せられることがあります。これは、「ジジイ is waiting for my reaction」の歌詞に登場する「めんどい しつこい よくすねる」といった「ジジイ」の行動と驚くほど重なるものです。この問題の本質は、年齢差や経験差そのものではなく、むしろ知識や経験を蓄積した側が、それを誇示せずに相手に伝える方法を誤り、結果として若い世代を遠ざけてしまうコミュニケーションの在り方にあると言えるでしょう。

おとぼけビ~バ~の楽曲は、単なる批判に終わらず、世代間の建設的な対話がいかに重要であるかを間接的に示唆しています。知識や経験の共有は、相手を尊重し、双方向の理解を深める姿勢があって初めて価値を持つものです。

参照元: Yahoo!ニュース / Merkmal