新研究:家庭・車内のマイクロプラスチック吸入量、従来の100倍に達する可能性

私たちがプラスチックの時代に生きる現代において、マイクロプラスチックへの継続的な曝露はもはや驚くべきことではないかもしれません。しかし、フランスのトゥールーズ大学による新たな研究では、家庭や車内で吸い込むマイクロプラスチックの量が、これまで推定されていた量の実に100倍に達する可能性が示唆されています。具体的には、人間は自宅や自家用車内で、肉眼では見えないマイクロプラスチック粒子を1日に約6万8000個も吸入していることが明らかになりました。

10マイクロメートル未満の微粒子に潜む脅威

本研究は、ナディア・ヤコベンコ博士を筆頭著者とするトゥールーズ大学の研究チームによって実施されました。研究者らは、自宅や自家用車内から16種類の空気サンプルを採取し、それぞれのサンプルに含まれるマイクロプラスチックの濃度と大きさを詳細に測定しました。この分析において特に注目されたのは、10マイクロメートル未満の微細なマイクロプラスチック粒子です。これは、より大きな粒子や肉眼で見える粒子と比較して、肺組織の深部まで容易に浸透しやすいという特性を持つためです。

これまでの研究では、10マイクロメートル以上の吸入粒子は主に上気道に集まりやすく、体の自然な防御機構によって比較的容易に排出されることが分かっていました。しかし、呼吸器系は10マイクロメートル未満の微粒子状物質を効果的にろ過することができません。このため、これらの極小粒子は肺の奥深くまで侵入し、空気中を浮遊する他の環境汚染物質とともに体内に取り込まれる可能性があります。複数の先行研究は、マイクロプラスチックが体内の正常な内分泌機能を乱し、がんをはじめとする様々な健康リスクを高める恐れがあることを示唆しています。

家庭や車内に浮遊する微細なマイクロプラスチック粒子家庭や車内に浮遊する微細なマイクロプラスチック粒子

広がるマイクロプラスチック汚染と屋内環境

米科学誌「PLOS ONE」に掲載された最新の論文では、マイクロプラスチックが「1950年以降の人類によるプラスチック材料の広範な使用と、プラスチック廃棄物の不適切な管理に起因する汚染物質」であると説明されています。マイクロプラスチックは、1マイクロメートルから5ミリメートルの大きさのプラスチック粒子を指し、様々な形状やポリマー組成で存在します。特に1~10マイクロメートルの微細な粒子状マイクロプラスチックを人間が吸入すると、肺組織の深部に到達し、組織の損傷や炎症、さらには関連疾患を引き起こす要因となり得ると警鐘を鳴らしています。

近年、マイクロプラスチックは屋外の大気エアロゾルや堆積物から頻繁に検出されており、その分布域は都市部や高度に工業化された地域から遠隔の山岳地帯、海洋境界層、さらには屋内環境に至るまで、世界中の多様な場所に及んでいます。この大気中のマイクロプラスチックの存在は、私たちが屋内外の空気からどの程度の量を吸入しているのかという重大な懸念を引き起こしています。特に懸念されるのは屋内環境です。最近の研究では、屋内の空気中に浮遊するマイクロプラスチック濃度が屋外より8倍高く、屋内に堆積したマイクロプラスチック粒子の濃度は屋外より30倍も高いことが示されています。先進国の人々は1日の約90%を屋内で過ごし、そのうち約5%を車内で過ごすことを考慮すると、屋内環境で吸入するマイクロプラスチックの量が著しく多いと考えられ、この問題への注意が不可欠です。

結論

今回の研究結果は、私たちの日常生活に密接に関わる家庭や車内といった空間が、これまで考えられていた以上にマイクロプラスチック汚染の温床となっている可能性を示しています。特に呼吸器系に深く侵入しうる微細な粒子への曝露レベルが高いことは、長期的な健康影響への懸念を増大させます。この新たな知見は、マイクロプラスチック汚染問題への意識を高め、より健康的な居住環境の維持に向けた具体的な対策を検討するきっかけとなるでしょう。

参考文献

  • Forbes Japan (Original Source: Yahoo! News Japan) – 「家庭や車内で吸い込むマイクロプラスチック、推定の100倍も:新たな研究が警鐘」
  • PLOS ONE (Scientific Journal) – Relevant research by Nadia Yakovenko et al.