テレビや芸能ニュースに触れる中で、ふと抱く疑問や不可解な点があるはずだ。その裏には、番組制作に携わる者だけが知り得る“法則”が存在する。今回は、『博士ちゃん』や『ケンミンSHOW』といった人気番組を手がける放送作家歴20年のデーブ八坂氏が、今年の『24時間テレビ』におけるSUPER EIGHT・横山裕氏のチャリティマラソン選出とその背景について、業界の視点から明快に解説する。
SUPER EIGHTの横山裕氏が今年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)でチャリティマラソンのランナーを務め、7億円もの寄付を集めて大きな称賛を浴びたことは記憶に新しい。しかし、彼がランナーに選ばれた当初、「なぜ今、横山裕氏なのか」と疑問に感じた視聴者は少なくなかっただろう。それは、長年この業界に身を置くデーブ八坂氏自身も感じた疑問だという。だが、その疑問は事前番組で語られた横山裕氏の壮絶な過去を知るやいなや、瞬時に納得へと変わった。
『24時間テレビ』チャリティマラソンで力走するSUPER EIGHT横山裕
アイドルが明かした「複雑な生い立ち」の衝撃
横山裕氏が告白した生い立ちは、視聴者に大きな衝撃を与えた。彼が3歳の時に両親は離婚。5歳の頃、母親が再婚し、年が離れた2人の弟とともに5人家族で暮らしていた。しかし、母親ががんに罹患し、闘病中に再び離婚。経済的に困窮した結果、やむなく2人の弟は児童養護施設に預けられることになったという。横山氏は家計を支えるため、中学卒業後すぐに建設会社に就職。その後アイドル活動を始め、その収入で弟たちの生活費や学費を支援し続けた。しかし、その間に母親は他界するという、想像を絶するような困難な人生を歩んできたことを彼は告白したのだ。この告白は、彼のチャリティマラソンへの起用理由を明確に裏付けるものとなった。
業界を揺るがした「テレビ放送許可」の決断
横山裕氏のこのあまりにも衝撃的な生い立ちの告白は、『24時間テレビ』を担当していない日本テレビの社員たちをも驚かせ、業界内で大きな話題を呼んだ。今年の『24時間テレビ』の総合演出を務めたのは、普段『上田と女が吠える夜』や『世界の果てまでイッテQ!』などを担当する前川瞳美氏だ。彼女は若くして日本テレビのゴールデンレギュラー番組の演出を務める優秀なディレクターとして知られている。少しでも表現を誤れば炎上につながりかねない複雑な生い立ちを、練り上げられた構成のVTRで巧みに視聴者に届けた手腕は、その演出能力の高さを証明している。
それにしても、売れっ子アイドルが自身の複雑な家庭環境をテレビで告白するという前例のない出来事は、業界に大きな波紋を広げた。前川氏の説得があったのかもしれないが、これをテレビで放送することを承認したSTARTO ENTERTAINMENTの覚悟は並々ならぬものがあったと、デーブ八坂氏は評価している。この決断は、彼らがタレントの人間性やメッセージを大切にする姿勢を示したものと言えるだろう。
参考文献: