自公連立解消が公明党支持層に与える影響:現場の創価学会員が抱える複雑な心境と「フレンド票」の危機

1998年から26年間続いた自民・公明連立政権が電撃的に解消された今、公明党支持層、特に創価学会員の間では、この歴史的転換に対する評価が複雑に揺れ動いています。長年創価学会の動向を取材してきた雑誌『宗教問題』編集長の小川寛大氏の分析によれば、世論調査の結果が示す表面的な「評価」とは異なる、現場の学会員たちが抱える具体的な苦悩と次期選挙への危機感が明らかになっています。この政治的変動が、今後の公明党の選挙戦略と支持基盤にどのような影響を与えるのか、詳細に掘り下げていきます。

世論調査と現場の乖離:連立解消への複雑な評価

JX通信社と選挙ドットコムが10月11、12日に実施した世論調査では、公明党支持層の約8割が連立離脱を「評価する」と回答しています。しかし、小川寛大氏は、この数字が現場の創価学会員たちの心境を完全に反映しているわけではないと指摘します。現場では「やった」と狂喜乱舞しているような雰囲気は少なく、むしろ「次の選挙はかなりきついぞ」という強い自覚が広まっているのが実情です。

多くの学会員からは「自民党の不祥事のとばっちりを食らっている」という切実な声が上がっています。彼らは、「公明党が苦しんでいるのは、我々が悪いのではない。我々は真摯に活動しているにもかかわらず、自民党の度重なる不祥事によって不必要な逆風に晒されている」と感じているのです。この状況は、長らく維持されてきた自公連立に対する根強い支持層の複雑な感情を浮き彫りにしています。

宗教問題編集長・小川寛大氏が自公連立解消後の公明党支持層の心境を分析宗教問題編集長・小川寛大氏が自公連立解消後の公明党支持層の心境を分析

「裏金問題」が揺るがす創価学会の選挙基盤と「フレンド票」

連立離脱の直接的な引き金となったのは、自民党が抱える「裏金問題」でした。小川氏の分析によれば、この問題は創価学会の選挙活動、特にその基盤を支えてきた「フレンド票」の獲得に深刻な影響を与えています。創価学会員は、自身の投票行動に加えて、友人・知人に投票を依頼することで「フレンド票」と呼ばれる票を積み重ねてきました。全盛期には、実数の3倍から4倍もの票をこの方法で集めていたと言われています。

しかし、裏金問題の発覚以降、「フレンド票」の獲得は極めて困難な状況に陥っています。学会員が友人に電話をかけると、「裏金問題とは何事か。お前たちは自民党の仲間ではないのか」といった厳しい問いかけに直面することが多くなったと報告されています。公明党が裏金問題に関与した自民党議員に推薦を出していた事実は、客観的に見れば、支持者から見ても「かなりおかしいこと」と映り、結果として創価学会の信頼性にも大きな影を落としていると小川氏は指摘します。この「フレンド票」の危機は、公明党の選挙戦において無視できない大きな課題となっています。

結論

自民・公明連立の解消は、公明党の支持基盤である創価学会員たちの心に複雑な波紋を広げています。世論調査では連立離脱を評価する声が多いものの、現場の学会員は次期選挙への厳しい見通しと、自民党の不祥事による「とばっちり」に苦しんでいるのが現状です。特に、自民党の裏金問題が、創価学会の伝統的な選挙活動を支えてきた「フレンド票」の獲得を著しく困難にしている点は、公明党にとって喫緊の課題であり、今後の選挙戦略に深刻な影響を及ぼすことが予想されます。


参考文献