近年、日本のテレビ業界は激動の時代を迎えていますが、特にフジテレビは現在、深刻な番組改編の波に直面しています。人気お笑いコンビ千鳥の大悟氏がMCを務めるバラエティ番組『酒のツマミになる話』の突然の終了決定は、その序章に過ぎず、同局ではさらなる“バラエティ番組雪崩れ終了危機”が報じられています。この背景には、番組制作を巡るトラブルから生じた出演者の降板、そして、より根深いフジテレビの資金難と大幅な制作費削減の必要性が横たわっています。視聴者や広告主の注目が集まる中、フジテレビがこの難局をどう乗り越えるのか、その動向に注目が集まっています。
千鳥・大悟が番組降板を決意した「酒のツマミになる話」の衝撃の舞台裏
フジテレビの看板バラエティ番組の一つであった『酒のツマミになる話』が、異例の時期にその歴史に幕を閉じることになりました。この突然の番組終了の直接的な引き金となったのは、MCである千鳥の大悟氏が降板を申し出たことです。
事の発端は、2024年10月24日に放送予定だった内容が、急遽、再放送に差し替えられた一件でした。当初の放送回では、大悟氏がダウンタウンの松本人志氏のコスプレを披露する予定でしたが、放送当日になってフジテレビの幹部がこれを問題視し、放送内容を変更するよう指示したとされています。民放キー局関係者によると、この判断の背景には、「コスプレであっても松本氏が画面に出れば、一部視聴者が過剰に反応し、CMスポンサーを刺激しかねない」というフジテレビ側の懸念があったとのことです。しかし、局内からは「過剰なコンプライアンスだったのではないか」との声も上がっていたと報じられています。
この急な放送差し替えの決定を当日知らされた大悟氏と相方のノブ氏(45)は、「さすがにやってられない」と感じ、番組降板を申し出た模様です。その後、大悟氏は10月31日の放送回で緊急メッセージを出し、「ノブとも話し合った結果、酒のツマミになる話、やめまーす」と視聴者に伝えました。その際、「面白くなければテレビじゃない」「フジテレビ。ありがとうございました!」といった発言は、フジテレビに対する皮肉とも取れる形で締めくくられ、大きな波紋を呼びました。番組は10月28日の収録が最後となり、撮りだめ分を含めて12月頭の放送で終了する見込みです。改編期以外での番組終了は異例であり、フジテレビにとって想定外の事態であったことは間違いありません。
千鳥の大悟氏がフジテレビ本社前に立つ姿。人気バラエティ番組「酒のツマミになる話」の終了を巡る報道が報じられ、フジテレビの番組打ち切り危機が浮き彫りになっています。
「中居氏・フジテレビ問題」が引き起こした深刻な資金難と制作費削減
『酒のツマミになる話』の終了は、フジテレビが直面しているより広範な問題の一端に過ぎません。同局は現在、深刻な資金難に陥っており、複数のバラエティ番組の終了が検討されていると伝えられています。この資金難の直接的な原因の一つとして、今年1月に大きく報じられた“中居氏・フジテレビ問題”が挙げられます。
この問題は、中居正広氏(53、当時引退を発表)と元フジテレビ女性アナウンサーとの間に起こったトラブルを巡るもので、報道によって多数のスポンサー企業がフジテレビから撤退するという事態に発展しました。現在、一部のスポンサー企業は徐々に戻りつつあるものの、今年3月期のフジテレビ単体の決算は、最終利益が328億円という巨額の赤字を計上する結果となりました。
この大きな赤字を受けて、フジテレビは今後、テレビ番組制作において大幅な制作費削減を余儀なくされています。民放キー局関係者によれば、同局の勝負どころであるゴールデン帯のバラエティ番組でさえ、かつての深夜枠程度の制作予算になるとも言われており、予算が合わず続けられない番組が今後さらに出てくる可能性が高いと指摘されています。このような厳しい財政状況が、様々な番組の存続に影を落としているのです。
予算の壁に直面する「呼び出し先生タナカ」:高コスト体質が命取りに?
フジテレビの制作費削減の影響を受け、終了が取り沙汰されているバラエティ番組の一つが、アンガールズ・田中卓志氏(49)がMC、シソンヌ・長谷川忍氏(47)がサブMCを務める『呼び出し先生タナカ』です。
2022年4月にスタートした同番組は、当初日曜夜9時に放送されていましたが、2023年4月に現在の月曜夜8時へと移動しました。番組の初期内容は、10〜15名ほどの出演者に一斉テストを実施し、珍回答を発表するというものでした。このフォーマットが、同局の大人気番組『めちゃ×2イケてるッ!』(〜2018年3月末)の人気コーナー『抜き打ちテスト』(2000年7月〜2017年12月)と非常に似ていたため、“パクリ疑惑”も囁かれ、ナインティナインの岡村隆史氏(55)も言及するなど、スタート当初から話題を呼びました。
しかし、この『呼び出し先生タナカ』が終了の危機に瀕している主な理由の一つは、そのコストパフォーマンスの悪さにあります。民放キー局関係者によると、番組に出演するタレント陣は、必ずしも超高額ギャラではないものの、毎回8〜10人、場合によっては総勢15人ものタレントが“生徒”として出演します。さらに、“高学歴ゲスト”として芸能人ではない専門家が出演することもあり、出演者が多い分、ギャラの総額は必然的に高くなってしまう構造です。現在のフジテレビの制作費削減方針の下では、このような高コスト体質の番組は、継続が困難になるという見方が強まっています。番組は2024年9月からはスタジオセットを変更し、出演者が1位を目指すスタイルにするなど、大幅なリニューアルを行ってきましたが、根本的なコスト問題の解決には至っていないのかもしれません。
フジテレビに押し寄せる番組終了の波は、個々の番組の事情だけでなく、局全体の経営問題と深く結びついています。人気番組の突然の打ち切りは、視聴者にとっても残念なニュースであると同時に、テレビ業界全体の変革期を象徴する出来事とも言えるでしょう。
結論:フジテレビが直面する試練と今後の展望
フジテレビが直面している“バラエティ番組雪崩れ終了危機”は、人気MCの降板劇から、局全体の深刻な資金難、そして制作費削減という多層的な問題が絡み合って生じています。千鳥・大悟氏の『酒のツマミになる話』降板は、制作現場と経営層の間の価値観の衝突を浮き彫りにし、「中居氏・フジテレビ問題」に端を発するスポンサー撤退と巨額の赤字は、同局の経営基盤を揺るがしています。また、『呼び出し先生タナカ』のような高コスト体質の番組が存続の危機に瀕していることは、フジテレビが今後、より効率的かつ革新的な番組制作を求められることを示唆しています。
この難局を乗り越えるためには、フジテレビは単なる番組の入れ替えに留まらず、抜本的な経営戦略の見直しと、視聴者、スポンサー、そして制作現場の信頼を取り戻すための努力が不可欠となるでしょう。テレビ業界全体の構造変化が進む中、フジテレビがどのようにしてこの試練を乗り越え、再び魅力的なコンテンツを提供できるようになるのか、その動向は今後も日本のエンターテインメント業界にとって重要な指標となるはずです。
参考文献:





