日本社会を揺るがすクマ被害は、各地で深刻化の一途を辿っています。特に北海道に生息するヒグマによる人的被害は後を絶たず、現場では一体何が起きているのでしょうか。今回は、書籍『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)より、2022年7月にヒグマに襲われた北海道のベテラン猟師、山田文夫さん(当時69歳)の戦慄すべき体験を紐解きます。役場からの通報を受け、同業者のSさんと共にヒグマ出没現場へ急行した山田さんを待ち受けていたのは、予期せぬ連続する事態でした。
日本の北海道に生息する野生のヒグマの姿。クマ被害の現場で警戒感を高める猟師たち。(イメージ写真)
崖下に転落したヒグマ:予測不能な事態の始まり
山田さんとSさんは猟銃を手に現場へ向かいました。道路上での発砲は避けるため、高くなった道から下のくぼ地へと降り、ヒグマに気づかれないよう身を隠します。約60mの距離で牧草地を餌食にする二頭のヒグマを狙い、地形を知り尽くした二人はそれぞれに発砲を準備しました。山田さんは牧草地の内側にいる一頭を、Sさんは淵にいるもう一頭を同時に狙撃します。しかし、Sさんの弾は外れ、驚いたクマは崖下へ逃げ去りました。一方、山田さんの弾は狙ったヒグマの横腹に命中。クマは一度倒れましたが、再び起き上がり、牧草地の淵まで歩いて座り込みました。
「逃げたクマよりも、目の前のクマを仕留めるのが先だ」。そう判断した二人は、座り込んでいるヒグマに同時に二発ずつ発砲。その反動で、クマは高さ6~7mの崖下へと転がり落ちました。これが、彼らにとって一つ目の誤算でした。
「なんだよオイ。動いてるわ!」:消えぬ脅威と二度目の誤算
ヒグマが転落した地点へ急ぎ、二人は上から崖下を覗き込みました。地面に残る血痕や、転がった跡の笹に付着した血を見て、山田さんは「クマは死んでから転がり落ちた」と判断しました。しかし、その時、一部分の笹藪がガサガサと音を立てて動きます。「なんだよオイ。動いてるわ!」。山田さんは動く笹藪から目を離さずSさんを崖上にとどまらせ、自身は崖の中腹まで下り、足場を固めました。
「姿が見えたら撃ってやろうと思ってさ」。しかし、動いていた笹はぴたりと止まります。あれ?と思った瞬間、先に逃げていたもう一頭のヒグマがどこからか現れ、木につるつると登り始めました。Sさんがそのクマを撃つと、今度はそのクマが滑るように木から落ちてきたため、弾が当たったかと思っているうちに、山田さんは先ほどまで凝視していた最初のヒグマの正確な位置を見失ってしまいます。これが二つ目の、そして致命的な誤算となりました。
結び
この山田猟師の体験は、ヒグマとの遭遇がいかに予測不可能で、一瞬の判断と不確実性が生死を分けるかを示しています。長年の経験を持つ熟練の猟師であっても、野生のヒグマの生命力と行動の読めなさには驚かされ、予期せぬ事態が連続することで状況は瞬く間に悪化します。この戦慄の現場で、山田さんは一体どうなってしまうのでしょうか。ヒグマ対策の重要性を改めて浮き彫りにする貴重な証言です。
参考文献
- 書籍『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)
 - 文春オンライン: 「なんだよオイ。動いてるわ!」撃ち殺したはずのクマが目の前に…69歳猟師が襲われた現場、駆除されたヒグマのおぞましい顎骨、クマに噛まれた右手の歯痕などの写真をすべて見る. (https://bunshun.jp/articles/photo/83176)
 - Yahoo!ニュース: クマ被害に揺れる日本社会。現場では一体何が起きているのか。書籍『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)より、北海道のヒグマに襲われた猟師・山田文夫さん(当時69歳)の事例を抜粋して紹介する。 (https://news.yahoo.co.jp/articles/f2b0ddab860798b500c17387407c570a513b365e)
 
					




