近年、「カメムシ混入」や「2026年度からの給食無償化による現場の混乱」など、何かと話題に事欠かない学校給食。しかし今、SNS上で特に大きな注目を集め、炎上しているのは、「宗教的配慮により『いただきます』の挨拶が廃止または任意化されている」という噂と、「誤発注による大量廃棄」に関する報道です。これらの真偽を探るため関係各所に取材したところ、「事実と異なります」との声が聞かれました。一体何が起こっているのでしょうか。
「いただきます」廃止・任意化の噂、その真偽は?
2023年11月4日、X(旧Twitter)のあるインフルエンサーが、「給食の『いただきます』廃止の声があるらしい」「実際に2023年に千葉県内で、給食前の挨拶を“各自の判断で行う”小学校があったようだ。理由は『宗教的な理由での配慮』」と投稿しました。この発信は瞬く間に拡散され、その後、一部のウェブメディアも「『いただきます任意化』にSNSが衝撃!『伝統文化』vs『宗教的配慮』」といった記事を配信し、世間の関心を引きました。感謝の気持ちを表す「いただきます」という言葉が、宗教問題とどのように関連するのか疑問が残りますが、この投稿の真偽は一体どうなのでしょうか。
学校給食に関する炎上報道のイメージ
関係機関が「事実ではない」と回答
まず、千葉県教育委員会に問い合わせたところ、同教委保健体育課の担当者は、高校の給食は管轄内だが、小中学校については市町村教育委員会の管轄であると前置きしつつ、次のように述べました。「基本的に『いただきますと言ってください』といった周知はしていませんが、平成31(2019)年3月に文部科学省から発行され、全国の教師がバイブルのように持っている『食に関する指導手引』の『給食指導』の指導例の中に『いただきますのあいさつをする』とは書かれていますし、それ以降、手引き内容に更新はありません」。
さらに、千葉市教育委員会の保健体育課担当者も、「2023年にそのような事案が小学校から報告が上がった経緯はない」と明確に否定しました。担当者は「給食に関する報道はひと通り目を通すようにしています。私もそのウェブメディアに上がっていた『いただきます任意化』という記事は見ました。しかし実際に2023年に宗教的な配慮で任意化したことは事実として把握していません」と回答。複数の関係機関が、SNSや一部メディアで拡散された「いただきます」の廃止や任意化については「事実とは異なる」との見解を示しています。
福岡市で話題になった唐揚げ1個の給食
多様化する教育現場と情報の正確性
在留外国人が過去最多を記録するなど、現在の学校現場にはかつてないほど多様な背景を持つ児童・生徒が集まっています。このような状況下では、学校ごとに様々な対応が求められるのは当然のことでしょう。しかし、今回話題となった「いただきます」の“廃止”や“任意化”については、千葉県および千葉市の教育委員会がともに「把握していない」と回答しており、公式な事実としては確認できませんでした。インターネット上で情報が瞬時に拡散される現代において、その真偽を正確に判断し、適切な情報発信を行うことの重要性が改めて浮き彫りになったと言えるでしょう。





