NHK紅白歌合戦2025:視聴率回復への期待と注目出場歌手

年の瀬が迫り、国民的な音楽番組「NHK紅白歌合戦」の出場者が今年も大きな注目を集めている。近年、視聴率の低下が指摘され「凋落」とまで言われることも多いが、第76回を迎える今年は挽回なるか、その戦略と見どころを探る。

第76回紅白歌合戦で司会を務める綾瀬はるか第76回紅白歌合戦で司会を務める綾瀬はるか

「ベストヒット歌謡祭」に見る若年層取り込み戦略

1951年にラジオで始まった紅白歌合戦は、2年後にはテレビ放送も開始し、1963年には81.4%という驚異的な視聴率を記録した歴史を持つ。しかし、近年はその人気に陰りが見え、一昨年は第1部の平均世帯視聴率が初めて30%台を割り込み29.0%、第2部も過去最低の31.9%を記録。昨年も第2部がわずかに上昇したものの、低空飛行が続いている。

しかし、今年は期待の声も上がっている。民放プロデューサーによると、11月13日に放送された日本テレビ系の音楽番組「ベストヒット歌謡祭2025」の出演者26組中、実に13組が紅白出場歌手と重複している点が注目される。ORANGE RANGE、BE:FIRST、幾田りらなどがその例だ。同番組の平均世帯視聴率は8.8%とまずまずで、特に13〜49歳の男女によるコア層の視聴率は、合格ラインの4%を大きく超える6.8%と非常に高い数字を記録した。これは若年層からミドル世代まで幅広く楽しまれたことを示している。このことから、最近のテレビ離れが顕著なコア層の取り込みを図るNHKの戦略が見て取れる。

旧ジャニーズ勢の復活とベテランの存在

この2年間、紅白出場がなかった旧ジャニーズ勢の復活も今年の目玉の一つだ。高い人気を誇るKing & Princeが出場するほか、同じく白組からNumber-iが出場することは大きな驚きとして話題を集めている。元々同じ事務所の同じグループから袂を分かった両者の「共演」は、それぞれのファンだけでなく、幅広い層の視聴者の注目を集め、視聴率の底上げに貢献する可能性が高い。

一方で、福山雅治やMISIA、石川さゆり、坂本冬美といった安定感のあるベテラン勢も引き続きトリを務めるなど、番組を支える存在として健在だ。「秋元康プロデュース」のアイドルグループからは、乃木坂46のみの出場にとどまった。また、放送開始100年を記念した特別企画では、堺正章と氷川きよしが登場予定だ。堺は、元男闘呼組メンバーを中心に結成されたバンドと共にステージに立つ。これらの顔ぶれは、まさに視聴率を強く意識した人選と言えるだろう。

第76回NHK紅白歌合戦は、過去の視聴率低迷から脱却するため、若年層からベテラン層まで幅広い視聴者層にアピールする戦略的な人選で臨む姿勢が鮮明になっている。旧ジャニーズ勢の復帰や特別な企画など、様々な要素が絡み合い、今年の年末の盛り上がりに期待が寄せられている。