東京・赤坂で発生した40代女性刺傷事件において、警視庁捜査一課は11月22日、大津陽一郎容疑者(43)を殺人未遂の容疑で逮捕しました。現役の陸上自衛隊員であった大津容疑者は、女性と9年間にわたる不倫関係にあったことを認め、「自分に家族がいることを伏せて付き合っていた」と供述しています。練馬区の自宅から赤坂まで約40キロの距離を自転車で移動し、計画的な犯行に及んだとみられるこの事件は、世間に大きな衝撃を与えています。
事件の概要と計画性の露呈
事件は11月16日午前10時25分ごろ、赤坂のライブハウス地下1階で発生しました。ライブ出演を控えていた女性が、開場を待つ間に黒い帽子の男に左腹部などを刺され、119番通報で救急隊が駆けつけました。捜査当局の調べにより、大津容疑者が練馬区の自宅から約40キロ離れた赤坂まで自転車で移動し、犯行の少なくとも2時間前から現場周辺を徘徊していたことが防犯カメラの映像で確認されています。また、犯行前には女性が出演する予告ポスターに黒いスプレーのようなものでバツ印を付けるなど、周到な準備をしていたことが判明。犯行時間はわずか30秒と短く、手袋や足にビニール袋を装着していたことからも、強い殺意を持った計画的犯行であったとみられています。犯行後も、大津容疑者は黒い帽子を深く被りマスク姿で顔を隠し、自転車で逃走する様子が複数の防犯カメラに記録されていました。
容疑者の供述と被害状況
逮捕後、大津容疑者は被害女性との関係について、「9年前にSNSで出会い、交際に至った」と詳細を明かしました。しかし、彼は自身が妻子を持つ身であることを隠し続けていたといいます。被害女性は内臓にまで達する重傷を負い、腎臓を摘出する手術を受けました。大津容疑者は犯行後、自身の勤務先である朝霞駐屯地に戻り、何食わぬ顔で翌日以降も勤務を続けていたと報じられています。
殺人未遂容疑で警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者
容疑者の人物像と周辺の証言
大津容疑者は2003年に陸上自衛隊に入隊し、朝霞駐屯地に配属。2018年ごろ青森県の八戸駐屯地へ異動し、2024年に朝霞駐屯地に戻ったとされています。朝霞駐屯地では第1施設大隊に所属し、重機や機材の管理、時には食事の準備も担当していました。知人によると、大津容疑者は茨城県常陸大宮市の名家出身で、公務員の父と教員の母を持つ教育熱心な家庭で育ち、穏やかな性格で積極的に友人を多く作るタイプではなかったといいます。青森県勤務前に結婚し、2019年には練馬区に約4700万円のローンで一軒家を購入。「円満な家庭を築いている」と周囲からは思われていました。駐屯地への通勤も、購入した自宅から自転車を利用していたそうです。
一方で、近隣住民からは「子供たちとの関係はあまり良くなかったのではないか」「地域のイベントにも家族で参加しても、大津容疑者はぽつんとしている印象だった」といった“別の一面”も語られています。また、大津容疑者は趣味をランニングとし、体力作りに励むなど、職場関係者からは「真面目な印象」を持たれていました。しかし、友人には「宿直が多くてなかなか家に帰れない」と話していたものの、自衛隊関係者からは「そこまで勤務シフトが厳しい隊ではない」と嘘を見抜かれていたと報じられています。
矛盾する言動と捜査の行方
逮捕から約20日が経過しようとしていますが、大津容疑者はいまだに「赤坂に行っていない」と容疑の一部を否認しています。防犯カメラの映像や周到な計画性を示す証拠が積み重なる中、彼の供述と事実との乖離がどこまで明らかになるのか、今後の捜査の進展が注目されます。この事件は、一見平穏に見えた人物の内面に潜む闇と、計画された犯行の恐ろしさを浮き彫りにしています。




