鈴木農水相の「おこめ券」配布巡り論争激化:国民と自治体から反発の声

米価の高騰が国民生活を圧迫する中、物価高対策として鈴木憲和農水相が提唱する「おこめ券」配布計画が、大きな論争を巻き起こしています。鈴木農水相は「コメ価格への影響やJAグループへの利益誘導はない」と主張していますが、インターネット上では批判が殺到し、世論調査でも賛否が拮抗。さらに、配布に伴う事務コストを問題視する自治体の「反乱」も始まり、計画の行方が注目されています。

鈴木農水相、批判に対し「利益誘導ではない」と反論

12月9日の閣議後記者会見で、鈴木農水相は複数の記者から「おこめ券」配布に関する質問を受けました。特に、「物価高対策としておこめ券を配布することに問題があるのではないか」という指摘に対し、同相は「コメの値段に影響を与えたいということは一切ない」「JAグループに何か利益誘導するということは全くありません」と述べ、自身の立場を擁護しました。しかし、この発言はネット上で「炎上」に近い状態となり、反論が相次いでいます。

閣議後記者会見に応じる鈴木農水相閣議後記者会見に応じる鈴木農水相

世論調査に見る賛否の拮抗と変化

読売新聞が11月21日から23日にかけて実施した世論調査では、「おこめ券」配布への賛成が49%、反対が42%と、国民の意見が拮抗していることが示されました。当初、鈴木農水相が就任時に強い意欲を示した際も、「もらえるなら欲しい」という賛成意見と、「ただでさえ高額なコメ価格が高止まりする」という反対意見が混在していました。しかし、12月に入ると「おこめ券反対」の声が急速に強まっていると報じられています。この変化の背景には、後述する自治体の動きが大きく影響していると考えられます。

自治体の「反乱」が反対の声を加速

高市政権は物価高対策として、令和7年度の補正予算案に自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」2兆円を計上する方針を明らかにしています。これは、政府が自治体に物価高対策の原資を渡し、その使い道を自治体に任せるというスタンスです。多くの自治体では、プレミアム付き商品券の発行、デジタルポイントの付与、上下水道料金の値下げ、給食費無償化など、さまざまな施策が検討されています。

しかし、一部の自治体は政府が推奨する「おこめ券」の配布に難色を示しています。その主な理由は、おこめ券の調達、住民への配布方法の決定、実際の配布作業、そして利用方法に関する問い合わせやクレームへの対応といった事務コストが莫大になるためです。この指摘は、世論に大きな影響を与えています。12月9日現在、江戸川区(東京都)、大阪市、交野市(大阪府)、福岡市、北九州市(福岡県)、仙台市(宮城県)、静岡市(静岡県)、旭川市、岩見沢市(北海道)など、複数の自治体が「おこめ券は配布しない」または「配布に後ろ向き」と報じられています。

「おこめ券」の手数料と使用期限に対する疑問

消費者が「おこめ券」に対して抱く最大の疑問の一つは、現行のおこめ券が額面500円であるにもかかわらず、実際に使えるのは440円である点です。残りの60円は印刷費や利益などの「マージン」とされており、多くの専門家が「手数料12%は高すぎる」と指摘しています。税金でこの60円のマージンを負担することへの疑問は根強く、もし自治体がJAの「おこめギフト券」を配れば、この60円がJAに入る可能性があり、JAグループへの利益誘導ではないかという批判につながっています。さらに、配布される「おこめ券」には新しく使用期限が設定されるとの報道があり、鈴木農水相が会見でこれを認めたことで、消費者の怒りは一層増幅されています。

結論

物価高騰に対する国民の不安が高まる中、鈴木農水相の「おこめ券」配布計画は、その有効性と公平性を巡り、国民、自治体、専門家からの厳しい視線にさらされています。事務コストの問題、不透明なマージン、そして使用期限の設定は、政府の物価高対策が真に国民のために機能するのかという根本的な問いを投げかけています。今後の政府と自治体、そしてJAグループの対応が注目されます。


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