物価や人件費の高騰が続くなか、創業から49年ずっとラーメン一杯290円で提供し続ける「博多ラーメン はかたや」。この驚きの価格は、一体どのように実現されているのか。
運営元である昭和食品工業の澄川誠社長に、創業時から守り抜いてきた”290円”の裏側と、その価格に込めた想いを伺った。
前編:「ラーメン1杯290円」で49年…24時間いつ行っても満席“街の日常を支える一杯”を提供するローカルチェーンが明かす“価格を変えない覚悟”と効率の極意
■“売価”はお客さんが決めるもの
原価も人件費も上がっているなかで、どのように「290円」を維持しているのですか? 単刀直入に尋ねると、澄川社長は静かに口を開いた。
「まず、その考え方が違うんです」
「売価というのは、原価積み上げ方式ではダメなんです。『売価はお客さんが決めるもの』。家計所得のなかの食費、そのなかでも外食費として使える金額は、お客さんが決める」
そう言い切る根底には、「ひとの暮らしを豊かにするサービスを提供したい」との考えがある。
「給料は上がらなくても、物価を下げたらその分暮らしは豊かになりますよね。原価が上がったから値段を上げるというのは、お客さんとの信頼関係ができていないということなんです」
1970年代のアメリカでは、オイルショックで大手チェーンが値上げした時、地域住民が「裏切りだ」と抗議した例があるという。
「それくらい地域に根づいて、店と客との関係性ができているということ。日本では値上げされても抗議運動は起きませんよね。それは、お客さんとの信頼関係ができていない証拠なんです」
【画像を見る】「はかたや」店内の様子はこんな感じ。
※外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
たしかに、いつものスーパーが値上げしても、「また値上げか」と思うだけで、誰も声を上げない。静かに別の店へ向かう。それを「仕方ない」と受け入れてきた。
一般的に、飲食店の価格設定は「原価積み上げ方式」だ。材料費・人件費・家賃などを積み上げて利益をのせ、最後に売価を決めるという標準的な方法である。






