シニア世代を狙うスマホ詐欺に警鐘!巧妙な手口とSMS詐欺から身を守る対策

スマートフォンは、今や家族とのコミュニケーションから日常の買い物、公共料金の支払いまで、私たちの生活に深く浸透しています。特にシニア世代の方々も当たり前のように使いこなしていますが、その利便性の裏には、スマホ詐欺という見過ごせないリスクが潜んでいます。セキュリティの専門家である中央大学国際情報学部教授の岡嶋裕史氏の新著『70歳からの安心スマホ術』から、高齢者を狙う巧妙な詐欺の手口と、身を守るための効果的な対策をご紹介します。

詐欺師が使う「焦り」の手口:冷静な判断力を奪うワナ

なぜ多くの人がスマホ詐欺の被害に遭ってしまうのでしょうか。その主な理由は、詐欺師が巧みにターゲットを「焦らせる」からです。例えば、「料金が未納のため、今すぐ支払わないと口座が凍結されます」「5時間以内に手続きをしないと大変なことになります」「今すぐ申し込めばお得です。急いでください!」といった不安を煽るメッセージや、時間を区切って急かす言葉によって、普段なら冷静に判断できることでも、正常な思考が妨げられてしまいます。

この「焦らせて思考を止め、判断力を奪う」というのは、詐欺師の基本的な手口です。最も恐ろしいのは、被害者本人がその状況にあると気づかないことです。周りから見れば不自然な言葉でも、本人は「大変なことになった」と思い込み、冷静さを失ってしまうのです。もし「急いで」「今すぐ」といった言葉で決断を迫られたら、「これは焦らされているのではないか?」と一度立ち止まって深く考えることが大切です。深呼吸をして一歩引けば、冷静さを取り戻し、詐欺から身を守ることができるはずです。「焦らせてくる相手は危ない」という原則を常に心に留めておきましょう。

なぜショートメッセージ(SMS)が特に危険なのか?

スマホ詐欺の手口には電話やメールなど様々ありますが、中でもショートメッセージサービス(SMS)は特に悪用されやすいツールです。SMSは「090」「080」「070」から始まる携帯電話番号だけでメッセージを送受信できる手軽さから広く利用されてきました。現在でも携帯電話会社からのお知らせや病院の予約確認、一時的なパスワード発行などで使われることはありますが、企業や役所の正式な連絡手段としてはメールなどが主流となり、その利用機会は減少傾向にあります。これは、SMSが非常に手軽である反面、電話番号さえ分かれば誰でもメッセージを送れる仕組みが悪用されやすく、詐欺に利用されやすいためです。

犯人が総当たり式でSMSを送信する様子(イメージ)犯人が総当たり式でSMSを送信する様子(イメージ)

詐欺犯たちは、いわゆる「総当たり」という方法で、手当たり次第にSMSを送信しています。「090-1111-0001」「090-1111-0002」といったように、電話番号の数字を少しずつ変えながら大量のメッセージを送っているのです。これらのメッセージには、巧妙なワナが仕掛けられています。メッセージ内のリンクには固有の識別情報が埋め込まれており、あなたがそのリンクをクリックすると、「この電話番号の人がクリックした」という事実が犯人に送信され記録されます。これにより、あなたの電話番号は「だまされやすい人」のリストとして悪質な業者間で出回ってしまい、さらに多くの詐欺メッセージが次々と送りつけられるようになるのです。

SMSは便利なサービスですが、上記のような仕組みから、通常のメールよりも危険性が高いものだと認識しておくことが、詐欺被害を防ぐ上で非常に重要です。

まとめ:詐欺から身を守るための心構え

シニア世代のスマートフォン利用が広がる中で、詐欺の手口はますます巧妙化しています。特に「焦らせて判断力を奪う」手口や、手軽に送れるSMSを悪用した詐欺には警戒が必要です。不審なメッセージや、緊急性を装って個人情報を要求するような連絡には決して応じず、一度立ち止まって冷静に判断する習慣をつけましょう。

安全なスマホ利用のためには、不審なリンクをクリックしない、提供元が不明なメッセージは無視するといった基本的なセキュリティ意識が不可欠です。本記事は、中央大学国際情報学部教授 岡嶋裕史氏の著書『70歳からの安心スマホ術』(青春出版社)を参考に、その核心となる知見をご紹介しました。高齢者の方々が安心してデジタルライフを送れるよう、これらの対策を日々の生活に取り入れていきましょう。